〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 48〉日本(語)と朝鮮(語)のはざまで/森崎和江②
2022年10月14日 09:09 寄稿17歳までほぼ全く日本を知らない日本人として成長し、朝鮮・慶州の風土の中で感性を育んだ森崎和江は、自分は朝鮮を「鋳型」として作られた存在だと言った。しかしそれは、前と後ろから銃を向けられているという父の言葉――皇民化教育を担いながらも、朝鮮人への敬意を持ちその育成に力を注いだ父の、朝鮮人の反日意識と、日本人憲兵との両方からピストルを向けられているという、「侵略」と「連帯」を同時に生きる分裂と緊張をともなうものであり、この思いは、敗戦直前に帰国した日本と自身を同一化できない意識となって森崎を形成した。