〈岡山初中教員日記 ①〉過程が大切/張裕美
2022年09月05日 11:30 寄稿朝鮮大学校を卒業し、岡山初中に配属され、6年目を迎えた。大阪で生まれ育ち、地元の朝鮮学校に通った私は中・高・大の10年間、声楽部に所属した。けれど、岡山初中には声楽部が無かった。
新任から2年間は、部活に就くことはなかったが、3年目にさまざまな事情で、知識も経験もないサッカー部の担当教員になった。もちろん、指導はできないので、補助教員として基本的な実務を受け持った。
これまでの人生で、サッカーとの接点は一切と言って良いほどなかったので、指導者たちが何を言っているのか全くわからない。そして何より休みがない。炎天下だろうが極寒だろうが関係なかった。
そればかりではない。毎週行われる練習試合に遠征、公式戦など、実務に追われ、終わらない毎日が続いた。なぜ、自分がサッカー部に就いているのか。なぜ、自分がしないといけないのか。投げ出そうと思ったことは一度や二度ではなかった。
しかし、生徒たちの力はすごいもので、無邪気にサッカーに励み、怒られようが必死にもがく子どもたちの姿は、私の考えをいつも正してくれる。そして、私の考えを変える一番のきっかけとなったのは、サッカー部の児童たちを「競演大会」に出場させたことだった。
スポーツの経験しかないかれらにどうしても芸術に触れてほしい、嫌なことも逃げずに全力で取り組んでほしいという思いから、競演大会の合唱部門に出場させた。無論、すべてがとんとん拍子にいかなかった。話しを聞かない生徒たちに雷を落とした日は何度もあった。練習の態度が悪く、途中で指導を放棄し、話し合った日もあった。その過程があり、日を追うごとに生徒たちの練習に取り組む姿勢が変わり、レベルは高くなっていった。初の競演大会は銀賞だったが、この過程はかれらにとって財産になったに違いない。
かれらの成長につながるきっかけにと思い、出場を決めた競演大会だったが、いつのまにか、かれらの姿から好きなことも嫌なことも全力で成し遂げることの大切さを学んだ。かれらに恥じぬよう、自分もがんばろうと決意した。この時くらいからだろうか、日頃の授業はもちろんのこと、子どもたちへの教養など、教員としての姿に関する考えが変わっていった。それは、結果ではなく、過程が大切であり、頑張ることに価値があるということ。置かれた場で、自分のできることをこれからも全力でがんばっていこう。
(中3担任)