日本が先制攻撃能力増強を急ぐ理由
2022年08月29日 06:30 対外・国際「米国と結託した危険な戦争国家」
相手国に対する先制攻撃を前提とする「敵基地攻撃能力」の侵略性を隠すために、「反撃能力」という名称を考案した日本は、ウクライナ紛争により国際な安全保障環境が揺れ動く中、この「能力」を確保するための武力増強に拍車をかけている。最近も「長距離ミサイル1,000発保有」「『反撃能力』地上配備へ、24年度にも」(読売新聞8月21日付)という報道があった。
長距離ミサイル1,000発保有
「北朝鮮が繰り返す弾道ミサイルの発射は断じて許されず、ミサイル技術の著しい向上を見過ごすことはできません」- 今年1月、通常国会の初日に行われた岸田首相の施政方針演説の一節だ。自衛力強化のためのミサイル開発を「挑発」「脅威」と罵倒し、朝鮮をねらった先制攻撃能力の保有を正当化するこのようなロジックが安倍・菅・岸田政権下で繰り返し公言されてきた。
日本は「反撃能力」保有を2022年の「防衛白書」に初めて明記したが、今年末に改正する「国家安全保障戦略」にも明記し、先制攻撃能力の保有を国策として位置づけようとしている。
同時に「能力」増強も進めている。これまで日本は周辺国の「脅威」に対処するという名目で、攻撃と防衛が可能な二重用途の軍事装備を開発導入し、それを使った軍事演習を繰り返し、「専守防衛」を任務としなければならない自衛隊を「攻撃型戦闘集団」、「先制打撃武力」に変貌させてきた。
今回、新聞報道で伝えられた長距離巡航ミサイル配備計画は、陸上自衛隊に配備されている国産の「12式地対艦誘導弾」の射程を現在の百数十kmから朝鮮と中国の沿岸部に届く1,000km程度に伸ばし、艦艇や戦闘機からも発射するよう改良するというものだ。地上発射の改良型は当初の予定を約2年早めて2024年度にも配備するという。早期にミサイルを1,000発以上保有するために、防衛庁は関連企業の設備投資を支援する経費を来年度の国家予算に反映する方針だ。
このような日本の武力増強は、米国の庇護の下で進められている。岸田首相は、バイデン大統領との首脳会談で、北東アジアの安保環境が日本の役割を求めているという理屈を立てて自国の軍備増強に対する支持を得た。中国を牽制しながら朝鮮とも対決するのは、単独では困難で、日本を引き込もうと画策する米国と利害関係が一致しているわけだ。
「アジアの安定を破壊する勢力」
朝鮮と中国に対する「抑止力」の向上を名分にして「敵基地攻撃能力」の保有を主張してきた日本は、米国の覇権主義政策が引き起こしたウクライナ紛争を注視しながら、不安定化する国際情勢の流れを自衛隊の武力増強をさらに進める機会にしようとしている。政界とメディアでは「プーチン大統領は『ウクライナは弱い』と思ったから攻めた。『強い』と思えば、戦争は起きなかった」という理屈で先制攻撃能力の強化を急ぐべきという主張が横行している。
敵機地攻撃について日本政府は、自国を守る個別的自衛権に限らず、日本が攻撃されなくても外国を守る集団的自衛権でも許容されるという見解を明らかにしている。
ウクライナ紛争の長期化とともに台湾をめぐる中米対立が激化する中、日本国内では覇権主義にとらわれた米国が中国の内政問題に軍事的に介入した場合、自衛隊も戦火に巻き込まれるという懸念の声が上がっている。実際に、敵機地攻撃能力を備えた日本は「仮想敵」と目された国からすれば、「米国と結託した危険な戦争国家」であり、軍事的に抑止すべき対象となる。
朝鮮は、これまで憲法改悪と防衛費増額、武力増強を着々と進めて日本が「反撃能力」まで保有すれば、「地域の平和と安定を破壊する危険な再侵略勢力として台頭することは明らかである」(朝鮮外務省ホームページ)と指摘している。
現在も朝鮮半島は停戦体制下にあり、朝鮮と米国は交戦関係にある。ところが日本は自国が攻撃されなくても米国とともに朝鮮を先制攻撃できる制度的な根拠をつくり、その能力を高めることに躍起になっている。
今後、「反撃能力」保有が「国家安全保障戦略」に明記され国策化が実現すれば、それは「日本の軍国主義復活」を意味する。この国の武力増強にはブレーキがかからなくなり、米軍と自衛隊の一体化は加速化する。そうなれば、日本は「専守防衛」の足枷を外して他国への武力侵攻を合法的に決行することができる「戦争国家」として、海外膨張の道に進むようになる。
(金志永)