新たな繋がりを力に/ハンアルム管弦楽団
2022年04月13日 14:26 文化初の演奏会
朝・日の奏者ら83人で構成されたハンアルム管弦楽団。10日には楽団結成後、初となる演奏会「胎動~movement~」が成功裏に行われた。実行委はもとより出演者らは、音楽を通じて生まれた新たな繋がりを力に、未来を見据えていた。
「朝鮮の音楽をフルオーケストラで演奏したい」
演奏会開催に至ったのは、神奈川同胞で構成された吹奏楽団に所属する許道鎮さん(52、団長)のこの一言がきっかけだった。
初級部4年のころから吹奏楽部に所属し、クラリネットを演奏してきた許さん。2年前からは東京都内の朝鮮学校で民族器楽部の指導を受け持つように。その過程で「吹奏楽だけでなく民族器楽にも関心を持つようになった」という。
各地の同胞演奏会では、吹奏楽や民族管弦楽器による個別の演奏会は行われているものの、管楽器と弦楽器、民族楽器がともに舞台に上がるケースは稀だ。一方、朝鮮で作曲される音楽は西洋楽器と民族楽器の音色を想定して構成されたものが多いという。かねてから「祖国の作曲家が描いた旋律を奏でたい」という思いがあった許さんは、さっそくホールを取り押さえ、出演メンバーを集めていった。
まず声をかけたのは、プロバイオリニストの崔樹瑛さん(38)だった。日頃フリーで活動している崔さんは、これまで舞台をともにした日本人奏者たちと広い繋がりがあった。
許さんの提案を聞いて「とても興味がわいた」と振り返る崔さん。すぐに日本人奏者らに声をかけた。「友人たちも関心を持ってくれて快く応じてくれた」。
2019年に企画した演奏会の準備はしかし、コロナ禍により思うように進まなかった。一度の延期を経て本格的に練習がはじまったのは今年の年初だった。
今回出演した日本人奏者のほとんどは、これまで朝鮮音楽を演奏した経験がない。だからこそ限られた時間の中で曲の完成度を高めるための努力が欠かせなかったという。
ハープ奏者の山浦文友香さん(35)は「はじめは慣れないリズムを理解するのに苦労した」と話す。