佐渡は語る―朝鮮人強制労働に目を(中)/遺産登録の何が問題か、識者の見解
2022年03月14日 14:14 歴史
戦時中、1200人を超える朝鮮人が労働を強いられた佐渡鉱山。日本政府が世界文化遺産登録への動きを進めるなか、この地での朝鮮人強制労働の実態を探るべく佐渡を訪ねた。遺産登録をめぐった問題点について新潟国際情報大学の吉澤文寿教授(朝鮮史)に話を聞いた。
―日本政府は、世界遺産の登録条件とされる佐渡鉱山の「普遍的価値」を1603~1868年の「江戸時代」に絞った
政府にとっての輝かしい歴史だけに光を当て、影の部分はあたかもなかったことにしたい。そんなかれらの意図が見て取れます。この時点で世界文化遺産の趣旨にそぐわないのではないでしょうか。
たしかに江戸時代の採掘技術などは「普遍的価値」のひとつと言えます。だからといって他を無視してもいいわけではありません。強制労働の現場として機能していた過去を含め「全体の歴史」を明らかにすべきです。
また、世界遺産は世界の人が認めないと意味がありません。隣国の人々が意義を感じられないというのなら、その意見も尊重されるべきでしょう。
そういった意味で、日本が何のために世界遺産登録を進めているのかについても問うていかねばならないと思います。
―現に新潟や佐渡の日本市民たちは、佐渡鉱山での朝鮮人強制労働の歴史について認識があるのか
新潟県内の小学校などでは、修学旅行で佐渡鉱山に訪れることが多いです。佐渡鉱山は今や観光地化されて、時代別に分かれたコースに沿って鉱内を回ることができますが、学校ではほとんど江戸時代に関する前近代のコースしか回りません。そのため子どもたちも「佐渡鉱山=手作業で金を掘り出した山」という認識しか持ちません。朝鮮人強制労働の歴史については知る余地もないといえるでしょう。
現在大学で受け持っている学生たちも、佐渡鉱山で朝鮮人が働いたことを知りませんでした。このように新潟県民には、鉱山での朝鮮人労働について認識がそれほど深まっていないのが現状です。
―歴史を否定する人たちも、自身らなりの「根拠」をあげて主張を行っている
歴史を見る際には、どんな史料を、どのように利用しているのかしっかり見ないといけません。