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短編小説「魚のために道をひらこう」14/陳載煥

2022年03月07日 06:23 短編小説

彼が結婚して3年目の秋に男の子が生まれたが、やがてその時の喜びにも勝る喜びが彼を跳びあがらんばかりにした。7尾のうちの3尾のメスが、6千あまりの大粒の卵を水中の木の枝に産み付けていたのである。

池のふちに張ったテントの中で、ついとろとろと眠っていた彼が、はっと目を覚ましてみると、夜のうちに卵からかえった数千のニジマスが、うようよ泳ぎまわっている。彼は大急ぎでヤスを手にすると、親魚を引っぱり上げた。はや親魚は、お腹がふくれるほど稚魚を食べていた。彼は、この愚かな親魚を地面にたたきつけて踏んづけてしまいたいほどしゃくにさわった。

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