短編小説「魚のために道をひらこう」9/陳載煥
2022年02月23日 06:21 短編小説光をみつけた魚は、またたく間に雲のように群がり寄ってきた。大小さまざまな魚が重なりあってうごめいている。あるものは勢いよく尾びれで水面をたたいてまっすぐ跳ねあがり、あるものはまるで鳥のようなすばしこさでテソンの胸ぐらにとび込んでくる。また、水中でテソンの下腹をつんつんつつくものもいれば尾ひれですねをたたく奴もいる。静寂そのものであった水面は、またたく間にパチャパチャという音をたて、まるで風呂屋のような賑やかさに変わった。片手を水中に入れて驚かしてみたが、魚の群れは子飼いのイヌころのようにちょっとは離れるがまたすぐ寄ってくる。魚は、あたかも彼と遊んでいるようである。こんなに人なつっこい動物はまれである。