〈源流をたどる―食・工・建6〉埼玉・やきとり大松屋
2021年10月29日 10:00 暮らし・活動「カシラが一番うまい」、揺るぎない自信で65年
祖国解放後、1・2世の同胞たちは異国の地で生きる術として、焼肉をはじめとした飲食業、遊技業や土木・建築業など、さまざまな事業を開拓し、発展させてきた。古くから同胞、日本市民らに親しまれ、愛されてきたあの飲食店、町工場、会社はどのようにして生まれたのか。連載「源流をたどる―食・工・建」では、1・2世同胞たちのバイタリティと意志を継ぎ、同胞社会、朝鮮学校、自らの家庭のために、今を生きる同胞企業家、店主、社長たちの情熱と苦悩、葛藤を取り上げる。
炭火でじっくりと焼いた豚のカシラ肉に、辛みのきいたみそだれをたっぷりとぬって食べる――埼玉・東松山名物の「やきとり」はこの独自のスタイルで人々に愛され、地域の食文化を支えてきた。そのルーツ、「元祖」となるのが、在日同胞1世がはじめ、60年以上にわたり営まれてきた「やきとり大松屋」だ。
試行錯誤の末に生み出した味
「大松屋」の初代店主・在日1世の裵相九さんは、若くして慶尚北道から日本へ渡った。植民地下、北海道の炭鉱に「徴用」された裵さんは祖国解放後、友人らと日本各地を渡り歩いた。そうしてたどりついたのが着いたのが、埼玉・寄居町だった。