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短編小説「春の農村にやってきた青年」3/千世鳳

2021年10月20日 09:32 短編小説

キルスは力を込めてふいごを押した。炉の中につめてある炭の間から、青い炎がヘビの舌のようにチロチロと勢いよく燃え上がった。その炎はふいごを押したり引いたりするたびごとに、燃え上がったり消えたりする。おやじはその炭の中に鎌、ホミ(朝鮮固有の手くわのような農具―訳注)、三又鍬などを放り込んだ。彼のごま塩頭に巻いた手拭いの端があおられてヒラヒラなびいていた。どうやら気が荒いおっさんらしいので、キルスはまるで爆発物のそばに座っているような心地がしてきた。

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