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〈本の紹介〉上司と部下のメンタルヘルス・マネジメント対策/松本桂樹、榎本正己共著

2021年06月25日 09:00 権利

パワハラ防止の一助に

税務研究会出版局。
03-6777-3450。
2000円+税。

バブル崩壊の余波が残る2000年代初頭以降、日本の勤労者を取り巻く労働環境は、終身雇用の終焉や目標管理・成果主義の導入に代表される大きな転換期を迎えた。過重労働による労働者のストレスはよりいっそう増大し、心の病による自殺や休職、離職も増加していった。

この間、長時間労働対策が幾度となく行われてきた一方、企業や組織における勤労者のメンタルヘルス対策の重要性は日増しに高まっている現状だ。また今日のコロナ禍により、さらなる対策も必要とされている。

本書には、カウンセラーである著者らに寄せられる相談に基づいて作成した架空事例が数多く掲載されている。▼うつ病は病気か、それともサボリか、▼「失敗したくない」若手社員の例、▼テレワークで部下が不愛想に…嫌われた?と焦る管理職の事例など、さまざまな場面における問題の原因やそれに対する正しい視座、対処のポイントについても簡単明瞭にまとめられており、新型コロナウイルスによる働き方の変化に伴う事例も豊富だ。

著者はこのように述べている。「メンタルヘルス対策に関しては、長時間労働対策から人間関係の問題に焦点がシフトしています」。

本書では昨年6月に施行された改正労働施策総合推進法(通称パワハラ防止法、大企業は昨年6月1日から、中小企業は22年4月から職場のパワハラ防止に向けた対策を義務付け)に関する詳細な解説もなされている。もちろん「コミュニケーションの活性化や円滑化」「感情のコントロール、コミュニケーションスキル、マネジメントや指導に関する研修」「適正な業務目標の設定等の職場環境改善のための取り組み」など、パワハラ防止のポイントもおさえる。

著者の言葉を借りるなら、パワハラ防止対策の法制化により「パワハラというワードに対して世間はより敏感になっていく」だろう。本書はパワハラに対する正しい知識と認識を身に着け、防止対策を講じるうえでの一助となるはずだ。

同胞たちや本紙読者も何らかの形で、多様な労働の現場に身を置き、あるいはそこに関わっている。より良い働き方について考えるきっかけを与える一冊。

(李鳳仁)

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