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〈歴史×状況×言葉 27〉谷崎潤一郎/植民地主義的な「美意識」によって

2012年11月19日 15:51 歴史

文豪・谷崎潤一郎は、1918年、中国旅行のため朝鮮を経由したが、一週間足らずの朝鮮滞在について「朝鮮雑観」という小文を書いた。

はじめに到着した釜山の朝の印象は、「飽くまでも青く青く澄んで透き徹っている空」「年中あんな景色と天気とばかりが続いたら、多分朝鮮は世界一の楽土だろう」といった爽快感に満ちている。一方、雨と湿気の多い「日本と云う国は気候の悪い国」と断定する。実際は釜山と日本ではさほど気候に差はないらしいのだが、こうした過剰な興奮と強調は、異国趣味とオリエンタリズムのまなざしから朝鮮・中国をとらえようとする意識の産物だった。

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