〈九州無償化裁判〉「朝鮮学校『無償化』排除に反対する連絡会」が抗議声明
2021年06月04日 14:31 民族教育朝鮮学校を高校無償化制度の指定対象から外したのは違法だとして、九州中高の卒業生ら68人が国に対し損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(深山卓也裁判長)は5月27日付の決定として、卒業生らの主張を退けた1審判決(19年3月14日、福岡地裁小倉支部)、2審判決(20年10月30日、福岡高裁)を支持し、上告を棄却した。
これと関連し、「朝鮮学校『無償化』排除に反対する連絡会」が同日付で抗議声明を発表した。以下、全文。
九州朝鮮中高級学校の高級部生徒「無償化」裁判の最高裁の上告棄却に断固抗議する!
2021年5月27日、第1小法廷(深山卓也裁判長)は、高校無償化から排除されたことを違法とし、国家賠償を求めて闘い続けている九州朝鮮中高級学校の卒業生68名の上告を棄却するとの不当な決定を下した。われわれは、この決定に断固抗議する。
2010年に始まった「高校無償化法」は、国際人権規約(社会権)の規定の実施であり、「全ての意志ある高校生等が、安心して勉学に打ち込める社会をつくる」ことを目的としている。政治的外交的理由に左右されることなく、全ての在日外国人高校生にも適用される法である。しかるに2013年2月20日、第2次安倍晋三政権の下村博文文科相は「拉致問題に進展がない、朝鮮総連と密接な関係があり、、、」などという名目で、朝鮮高級学校のみを無償化適用除外とするために文科省令を改悪した。在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)と朝鮮民主主義人民共和国との関係をことさら強調し、政治的外交的理由により朝鮮高級学校を無償化から除外し、朝鮮高校生の学ぶ権利を侵害したことは明らかである。
全国5か所で闘われている「無償化」裁判で不当判決の多くは、朝鮮総連の朝鮮学校への「不当な支配」を適用除外の理由としているが、これは国や一部報道機関によって意図的に作られたものである。大阪地裁は朝鮮学校の正当な権利を認める冷静な判断を下した。朝鮮学校に対して「不当な支配」をしているのは日本政府であり、それがヘイトスピーチ・ヘイトクライムを助長したことは言うまでもない。大阪地裁と他の地裁・高裁の判断が大きく異なるなかで、最高裁がなすべきは、一片の上告棄却、上告不受理決定通知ではなく、真摯な審理を通じて、原告の主張に耳を傾けることではないのか。朝鮮学校の子どもからもれる「朝鮮人は日本にいてはいけないの」「朝鮮学校で学んではいけないの」の言葉に司法府として応えるのが最高裁の責務である。最高裁をわれわれは許さない。
納税の義務は等しく負わせておきながら、補助金の凍結・減額を行い、高校無償化から朝鮮高級学校を外し、幼保の無償化から朝鮮幼稚園を外し、さらにはCOVID-19に係る支援からも朝鮮学校を排除するなど、日本政府は朝鮮学校に対して一貫した差別政策を採り続けている。「多文化共生」を口にしながら、朝鮮に繋がるものは差別する日本政府には歴史認識も人権意識も欠落しており、われわれはそれを何としてでも正さなければならないのである。
朝鮮学校「無償化」排除に反対する連絡会は今後も引き続き、朝鮮学校への補助金支給・高校及び幼保の無償化適用を求め、全国の仲間とともに連帯して取り組んでいくことを表明する。
以上
2021年5月31日
朝鮮学校「無償化」排除に反対する連絡会
共同代表 坂元ひろ子、佐野通夫、田中宏、長谷川和男、森本孝子