〈詩〉ひとつだけの木 / 金正守
2012年10月09日 16:35 文化・歴史春には花を咲かせ
夏には木陰をくれる
それだけの木ではない
秋には実を結び
冬には風を防ぐ
それだけの木でもない
遥か海の彼方
モランボンの丘にころがっていた
銀杏の種
心のふろしきに大事に包み
海を渡ってきた種
日朝親善の証しになれと
丹精込めて笛木を育て
今では大きく大きく空へと伸びた
イチョウの木
根岸の森に
一番近い国が
一番遠い国になってはならないと
日朝の明るい未来を夢見て
日本の友が育てた木
《ピョンヤン イチョウの木》
この標札の文字を憎み
蹴られ
唾もはかれ
鉈で傷つけられた木
それでも
この国の雨風に耐え
明日へと大きく伸び誇る
イチョウの木
いつかは訪れる春の日に
この木の下で
日朝の手と手がつながり
歌と踊りに酔いしれる
その日を願い
今日も大地にそびえ立つ
日本に
ひとつだけの木
この世界にも
ひとつだけの木である
(朝鮮新報)