世界遺産・高句麗壁画古墳報道写真展、華麗に開幕
2012年10月09日 12:13 文化・歴史東アジアに連綿とつながる文化
人類共通の偉大な遺産
朝鮮民主主義人民共和国の古墳壁画の魅力を最新の写真で紹介する、世界遺産「高句麗壁画古墳報道写真展」(主催=共同通信社、日本新聞博物館)が6日から開幕した(12月16日まで)。そのオープニングセレモニーが5日、日本新聞博物館で行われた。会場には、共同通信社の石川聰社長、日本新聞協会の鳥居元吉専務理事、文化財保護・芸術研究助成財団の小宮浩専務理事、神奈川新聞社の斉藤準一社長、総聯中央の許宗萬議長をはじめとする来ひんと関係者約100人が参加した。
セレモニーであいさつに立った石川社長は、今回の写真展は2005年秋、共同通信社創立60周年を記念し開催された高句麗壁画展に次ぐ第2回目の企画であると言及した。また、四神図などの色鮮やかな絵が描かれていることが大きな特徴である高句麗壁画は、東アジアの美術史の中でも特出すべき優れた絵画性を持っていると指摘。「6年前に各国の報道機関に先駆けて、朝鮮・平壌に支局を開設した共同通信社は、この間通常の取材活動とともに、人類共通の偉大な遺産である高句麗壁画古墳の調査・取材を続けてきた。これまで発掘された多くの貴重な資料を通じて、たくさんの方々に古代のロマンを感じ取って頂ければ」と話した。
続いてあいさつした鳥居専務理事は、2000年10月に新聞博物館が開館して以来、博物館ではこれまで、新聞ジャーナリズムの多くの企画展を開催してきたが、考古学のイベントは今回が初めてだと述べながら、「共同通信社による独占的な取材、撮影した写真で、ベールに包まれていた高句麗壁画の全貌を伝える意義が極めて大きいと確信している」とし、今後も新聞の歩み、現代を伝えるために取り組んでいきたいと話した。
今回の調査の総監修を務めた東京大学の早乙女雅博教授は、古墳の調査にあたって朝鮮考古学研究所の研究員たちの協力のもと、日本のさまざまな技術を駆使し調査、撮影ができたと報告。「温度と湿度の変化によって壁画の保存状態を維持し、100年後、200年後も子孫たちに壁画を伝えるうえで、これらの写真が単なるコピーではなく、非常に大きな価値がある」とし、写真を見ながら高句麗壁画に描かれた人物から見る朝鮮の社会文化を感じ取ってもらいたいと話した。
小宮専務理事は、同財団の創設者で、3年前に亡くなった日本の画家でユネスコ親善大使の平山郁夫氏が、「文化を通じた社会、国際貢献」を一つの座右の銘とし、高句麗古墳がユネスコに登録されるため物心両面で尽力したことなどについて紹介。「今回の写真展を通じて、東アジアに連綿とつながる文化の系統、つながりを皆さんに理解してもらえれば」と語った。
セレモニーに続いてテープカットが行われた後、展示ホールでは、早乙女教授による解説のもと、内覧会が行われた。
展示ホールには、2010年と2011年に調査した古墳の中から、高山洞1号墳(6世紀初め)、玉桃里古墳(5世紀)、東山洞古墳(5世紀前半)などが主に展示されている。
1936年、植民地支配下で日本人研究者によって発掘され、今回76年ぶりに再発掘、調査された高山洞1号墳は、ほぼ同じ状態で残っていたという。しかし、「今回新たな発見として、奥室の北壁に描かれた2頭の玄武の真ん中に墨で『武』という文字が書かれていた。これは『玄武』という字を書いたと思われるが、76年前にこの文字は見つかっていなかった」と解説。
また、今回の調査では、赤外線カメラと紫外線カメラが多く使用されたという。この二つの撮影法によって、壁に墨で描かれて薄くなった輪郭、実際見てもわからないような文字や図を、より鮮やかに復元させることに成功したと早乙女教授は話した。
次に、前室と奥室の二つの部屋を持つ玉桃里古墳に描かれているものは、歌を歌い踊っているとみられる人々、馬に乗って狩りをしている人など、そのほとんどが人物像であり、「王」「大」などの字も描かれている。
東山洞古墳もほとんど人物で、古墳の中に部屋が二つある。早乙女教授は、「ここからわかることは、高句麗古墳は大きく分けると、二つの部屋がある古墳は人物像、部屋が一つだけの古墳には四神の画が描かれていることがわかる。その差は、時代が違いである」と話した。例えば、「人物が描かれている徳興里古墳は408年頃作られたものだが、一方、高山洞1号墳は大体それよりも100年はあとに描かれた。高句麗壁画には、古い段階と新しい段階があるということも、この2年間の調査でわかった」。
また、古墳の中から見つかった副葬品が中国・浙江省の窯でも類似品が発掘された例をあげ、当時の中国との活発な往来があったこと、壁画を通じた当時の生活、風習がわかるとし、古墳から得られる当時の情報が非常に多いと、早乙女教授は話した。
その他、高山洞無番号墳(6世紀)、高句麗壁画にルーツをもつとされる壁画が描かれている高松塚古墳、キトラ古墳の写真の他、多数の地方新聞に紹介された記事も展示されている。
内覧会の後、同館内でレセプションが行われた。レセプションでは、共同通信社の伊藤修一専務理事があいさつに立った。
伊藤専務理事は、「アジアをめぐるさまざまな課題がある中、この写真展が一衣帯水の隣国、朝鮮半島の古代文化に対して理解を深めてもらうと同時に、日本の文化がそれとより密接な関係にあるということを、市民の方々に改めて見直していただくきっかけになれば」と話した。
(文・尹梨奈、写真・盧琴順、高句麗壁画の写真は共同通信社撮影)
高句麗壁画古墳報道写真展
共同通信社が2010年、2011年に平壌とその周辺の古墳5基を取材、調査した中、高山洞1号墳、玉桃里古墳、東山洞古墳を中心とした写真など約60点が展示されているほか、高山洞1号墳と高松塚古墳の実物大模型が展示されている。また、共同通信社が2004年、2010年、2011年に撮影した古墳内部の映像、また、1931年に京都府立京都第一高等女学校(当時)が修学旅行で朝鮮を訪れた際の記録映像が放映されている。
日本新聞博物館
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