〈6人制混合バレーボール世界大会・最終日〉同胞選抜チームが2位/在日朝鮮人の存在を世界へ
2020年03月09日 10:50 スポーツ在日本朝鮮人バレーボール協会の同胞選抜チームが6人制混合バレーボール世界大会(5~8日、千葉・館山運動公園体育館)の身長185cm以下カテゴリーで2位の成績を収めた。同カテゴリーに出場したのは、10代、20代前半の選手らで構成された選抜チーム。今大会では、ロシア、ハワイ、香港との総当たり戦を2巡戦い、6戦4勝2敗で決勝に進出。8日に行われたロシアとの大一番で敗れはしたものの、水準の高いバレーで各国からの注目を浴びた。
「同胞選抜の意味」
同胞選抜チームは4チームによる総当たり戦で、ロシアと2度対戦。6日の初対戦では2-0(25-23、25-20)で勝利を収めた。
ロシアの3番、Belenkii Mikhail選手によると、「(同胞選抜チームは)予想以上の強さで、ロシアの選手たちは危機感を持っていた。だから戦術を少し変え、プレーのスピードを速めようと話し合った。同じ相手に2回も負けるわけにはいかないから」。3日目の再戦では、ロシアが0-2(22-25、23-25)で雪辱を果たした。
同日夜、同胞選抜チームはミーティングでロシア戦のビデオを見て、修正点を話し合った。いくつかのプレーで改善すべき点はあるが、「気持ちで優れば絶対に勝てる」。主将を務める大阪朝鮮排球団の高昇佑選手(21)は、「試合を重ねるごとに一体感が増し、『優勝したい』という気持ちが高まってきた」チームに自信を持っていた。
迎えた決勝戦、第1セットは序盤からロシアがペースを掴んだ。同胞選抜チームは、アタックをいくつもブロックされるなど思うように得点が決まらない。第1セットは17-25で奪われる。
第2セットもリードを許す展開が続く。流れを手繰り寄せようとするが、相手の勢いを止めることができず、スコアは16-25に。0-2の敗戦を喫し、2位で大会を去ることになった。悔しさのあまり、選手たちの目から涙がこぼれ落ちた。
高昇佑主将は「攻撃の糸口は見えたけど、チーム全体での修正が遅かった」と悔しさを滲ませながらも、「今大会で得られたものはすごく大きい」と語った。
とりわけ、「同胞選抜としてプレーする意味」を実感した話す高主将は、「バレーボールに親しむ若い同胞を増やすには、このような大会で結果を残さないといけない。今度また国際大会に参加できるチャンスがあるなら、ぜひとも出場して優勝したい」と語った。
大会の表彰式では、185cm以下カテゴリーで2位、220歳以上カテゴリーで3位に入った同胞選抜チームがそれぞれ表彰された。また、MIP(Most Impressive Player)に185cm以下チームの高昇佑主将、220歳以上チームの金洋世選手(34)が、敢闘選手賞に185cm以下チームの金容利選手(22、大阪朝高出身)が選出された。
大会実行委員長である日本混合バレーボール連盟の大江芳弘理事長(40)は同胞選抜チームについて、「高いパフォーマンスを見せ、大会の盛り上がりに一役買ってくれた。特に若い選手たちは才能があり、自立的で素晴らしかった」と賛辞を送った。また、「今大会を通じて在日本朝鮮人バレーボール界の地道な活動を初めて知り、感銘を受けた。次の大会には朝鮮、韓国も招待し、スポーツを通じた国際平和に貢献したい」と語った。
人をつなぐ架け橋に
身長185cm以下チームでまとめ役を担った金磨那選手(大阪朝高出身、23)は、「大会の準備期間から今日までの日々を通じて、チームの絆がすごく強くなった。誰もが『今日で解散するのは寂しい』と言っていた。またいつか、チームのみんなで集まりたい」と話す。
ほかにも印象深かった思い出がある。それは「人とのつながり」だ。
「色眼鏡」をかけず、フレンドリーに言葉をかけてくれた外国人選手たちとの出会い、それに、地域も世代も違う同胞選手たちとの出会い。とりわけ後者に思うことが多かったという。
「日本の大学に4年間通う中で同胞たちとの関係性が薄れていた。今大会を機に、同胞たちとの輪をもっと広げていけたら」(金磨那選手)
在日朝鮮人バレーボール協会にとって、6人制混合バレーボール世界大会への出場は初めての試みとなった。
今大会に出場した同胞選抜チームのメンバーに話を聞くと、誰もが「新たな希望」や「かけがえのない思い出」を得られたと口にする。そして、最も大きな役割を果たした選手に、満場一致で元プロビーチバレー選手である黄秀京選手(35、同協会理事)の名前を挙げる。
バイタリティー溢れる人柄で多くの選手たちの心に働きかけ、準備期間の短かった「即席チーム」をまとめるために力を尽くした黄選手。今大会への出場も、彼女の力によるところが大きい。
黄選手は「自分ができることは、これまでの経験や人脈を生かして、人と人とをつなげる『架け橋』になること。その過程で1人ひとりの可能性を広げたい」と話す。現役時代に国際大会への出場を断念せざるをえない悔しさを味わっているからこそ、「これからも同胞たちが世界にチャレンジできるチャンスを作っていきたい」と考えている。
同胞選抜チームの総監督を務めた同協会の鄭燦吉理事長は、「今大会を通じて在日朝鮮人の存在を多くの人々に知らせることができたはずだ」とし、バレーボールの大衆化を図るために、年齢や性別に関係なく楽しめる6人制混合競技の普及にも取り組みたいと話す。
同協会の金君栄会長は、「同胞バレーボール界の歴史に新たな1ページが刻まれたことを嬉しく思う」とし、さまざまなバックグランドを持つ同胞たちの受け皿を、バレーボール界で作っていきたいと語った。
(李永徳)