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〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 16〉かつてと現在の危うさ、未熟さ/大江健三郎②

2019年10月05日 09:00 寄稿

「性的人間」(新潮文庫)。「セヴンティーン」が収録されている

尾崎真理子氏は「大江健三郎全小説3」(講談社刊、2018)巻末の解説となる文章で、「セヴンティーン」、続編「政治少年死す」の二部作についてこう書いている。「性の衝動に最も突き動かされ易い年齢ともされる一七歳頃の少年が、まだ思想以前の、どれほど危うい心情で日々を生きているか、国家体制を揺さぶるテロの実行犯としてどれほど呼び込まれやすい存在であるか、ということだ」。

「思想以前の」「危うい心情」が半世紀以上経て、世界中の、現代日本の若者たちをいっそう捉え、性とテロリズム、他者排撃への衝動を暴発させている。大江の追求を現代の世界と日本に置き換え読み直す意味は小さくない。

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