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〈トンポの暮らしを支える/こちら同胞法律・生活センターです!66〉施行から25年、DV防止法

2026年02月19日 08:15 寄稿

DV防止法(正式名称は、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)が制定・施行され25年が経過しました。DVという用語は、「セクハラ」、「ストーカー」などと同様、私たちの暮らしの周辺でも耳にすることがあり、広く社会に浸透してきたようです。

各地にある配偶者暴力相談支援センターに寄せられる相談件数も年々増加しています。内閣府の調査によると、2024年は約12.8万件、結婚したことのある人の25.1%が配偶者から暴力を受けたことがあり、DVは身近な問題とも言えます。

しかしながら、その一方で、何がDVなのか、どういう状況がDVにあたるのか、そしてDVがもたらす影響など、DVについての理解が深まっているかというとそうではないようです。

■DVとは

DV防止法では「DVとは、配偶者や恋人など親密な関係にある、またはあった者から繰り返し行われる暴力」であり、「心身に有害な影響を及ぼす言動」と定義しています。そして「親密な関係にある者」とは、配偶者、離婚した相手、内縁(事実婚)の者、生活を共にしている婚約者や恋人としています。

これに対し、NPO法人全国女性シェルターネットは、「夫婦や恋人、好意を寄せた相手など、親密な関係にある人(または元の夫婦や恋人)からの虐待、脅迫、侮辱、非難、抑圧、殴るなどさまざまな方法で自由を奪われ、人間としての尊厳を否定され、支配されること」とし、また、米国司法省のHPでは「それがどのような関係にあれ、親密な関係の相手に対して力や権力をもち、相手を支配し続けるためにその力を使って繰り返し行う虐待行為である。DVは、身体的、性的、感情的、経済的暴力、あるいは心理的攻撃や脅威など、相手に影響を与える行為である」としています。このような内容を踏まえると、DVとは「親密な関係にある相手から様々な方法で振るわれる暴力、虐待であり、力による支配であり、有害な影響を与えるもの」と言えます。

何が暴力にあたるかについては、▼殴る・蹴るなどの身体的暴力、▼無視、人格を否定するような暴言を吐くなどの精神的暴力、▼必要な生活費を渡さない、仕事を辞めさせるなどの経済的暴力、▼性行為を強要する・避妊に協力しないなどの性的暴力、▼日中何度も電話をかけてきたり、携帯をチェックしたり交友関係を制限するなどの社会的暴力、▼子に配偶者を中傷するようなことを言ったり、子への危害をほのめかすなど、子を利用した暴力などがあげられ、暴力の形態は多様で、これらが重層します。「DVとかではなく、モラハラなんです」と言う相談者も少なくありません。しかし、言葉や態度で巧妙に心を傷つけるモラルハラスメントは精神的暴力であり、暴力の形態の1つにすぎません。

DVはこのような様々な暴力、力を用いて、何かをさせたり、させない、相手を自分の思いどおりにコントロールする威圧的な支配と言えます。なので、身体への暴力の有無にかかわらず、その関係性すなわち「力による支配・被支配の関係性」の中で生じているならば、それはDVなのです。また、DVは力の差がある関係性において生じやすいといえます。この点において、お互いに感情を爆発させて火花を散らすといった「夫婦ケンカ」とは全く異なります。「夫婦ケンカ」は「ケンカ両成敗」ですが、DVには「加害者」と「被害者」がいます。

■DVがもたらす影響

DV防止法でも言及されているように、DVは心身に有害な影響を与えます。殴られたり、侮辱されたり、無視されるなどの行為により、最初は理由がわからず混乱して、自分に落ち度があったとか自分が悪いなどと思いがちです。そのうち、相手を怒らせないようにすることに必死になり、耐え切れず、相手に反論すると、長時間にわたり説教されることもあります。次第に日常の些細なことも自分で判断できなくなり、無気力、不眠、食欲減退、涙が止まらないなどの抑うつ症状が出て、心療内科等の受診が必要な状態になることも少なくありません。暴力に耐え続けた結果、うつ病を発症し、回復に何年もかかってしまうこともあります。

また、DVはその当事者間に子がいる場合、子にも重大な影響を与えることが学術的な調査により明らかになっています。そのため、児童虐待防止法では、父母間の暴力の目撃は、子への心理的虐待に当たるとしています。

DVの背景には当事者間の力の差があります。ところが、DV防止法はその前文において「・・・配偶者からの暴力は、犯罪となる行為をも含む重大な人権侵害であるにもかかわらず、・・・配偶者からの暴力の被害者は、多くの場合女性であり、経済的自立が困難である女性に対して配偶者が暴力を加えることは、個人の尊厳を害し、男女平等の実現の妨げとなっている」と書かれています。DVが男女平等を妨げているのではなく、平等でないから、DVが生じているのです。DVは男女のみならず、性別にかかわらず親密な関係にある当事者間で起きています。DVの根絶のためには、何よりも性差別の撤廃こそが重要です。

現在のところ、各地に325の配偶者暴力相談支援センターが設置されており、内閣府のDV相談プラスなど、電話やチャットで相談できるところがあります。同胞法律・生活センターでも各種の情報を提供できるので、いつでもご相談ください。

(金静寅、同胞法律・生活センター副所長、社会福祉士、公認心理師)