公式アカウント

〈本の紹介〉睡眠の起源/金谷啓之著

2026年01月06日 08:00 社会

眠っている姿が「標準」?!

MLB・ドジャースタジアムのロッカールームに、今季から1台16万㌦(約2400万円)の仮眠用ベッドが導入され、話題を呼んだ。リラクゼーション効果や体力の早期回復が期待され、赤外線ライトで筋肉や関節をほぐすことにより、あっという間に眠りにつけるという。
そもそも、なぜ私たちは毎日眠るのか――改めて問われると知っているようでわからない。毎日8時間眠るとするならば、一日の三分の一を睡眠に費やしていることになる。90歳まで生きた場合、ざっと約30年間は寝ているのだ。

古代ギリシャの哲学者・アリストテレスは睡眠について「ヒトをはじめとした動物が瞼を閉じて運動を停止する状態」と述べた。現在の学界では「運動の停止状態」を「脳の停止状態」に置き換え、脳の活動を計測することで睡眠の本質を究明しようとする試みが多くの学者によって行われてきた。

本書の著者も、自然科学の観点から「睡眠」という生理現象の解明に挑むフロントランナーの一人である。本書では「眠りと時間」「眠りの仕組み」「眠りと意識」といった項目別に昆虫やヒドラを素材にしたユニークな考察を展開し、第6章で従来の常識を根底から覆す画期的な見解を披露している。

――われわれにとって、「起きている姿」「眠っている姿」のいずれも生命維持活動にほかならない。そして「生物は眠っている方がデフォルト(標準的な状態)で、起きている方が特別である」…と。
起床して、一日に必要な栄養を摂り、日中に外で活動するのはすべて「眠るため」であり、「体力を回復するために眠る」のではなく「良質な睡眠を得るために起きて活動する」というパラドックスをアリストテレスが聞いたらどう思うだろう。

古来、生物の眠りについて、世界中でさまざまな学説が唱えられてきた。本書には、著者による独創的でマニアックな研究過程が克明に記されている。

活動するために眠るのか。

眠るために活動するのか。

今夜、布団の中で壮大なテーマに挑んでみてください。

(健)

Facebook にシェア
LINEで送る