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〈留学同 80年の軌跡⑧2020年代(上)〉コロナ禍でも活動を止めず

2025年12月09日 09:11 総聯

日本の大学や専門学校に通う在日朝鮮人学生のための団体で、その源流は日帝植民地下、朝鮮本土より日本へ留学し、日本の地で朝鮮独立を掲げ闘った朝鮮留学生たちの活動にある。総聯傘下団体の中でも最も長い歴史を持つ留学同は、この朝鮮留学生たちの意志を継ぎ、今日まで一貫して祖国と民族、同胞社会の発展に寄与し、在日同胞と朝鮮留学生の民主主義的民族権利の擁護のために活動してきた。80年の歴史を振り返る本連載の執筆は、留学同中央が担当する。月1回掲載。

2020年、新型コロナウイルスの世界的流行は、人々の暮らしを一変させた。外出自粛が強く求められ、人と会うことさえ厳しい目で見られる空気が生まれていった。

留学同の活動も大きく制約を受けることとなった。

大学や専門学校では入学式が相次いで中止され、授業もオンラインへと移行し、キャンパスから学生の姿が消えた。学生同士が顔を合わせる機会は激減し、従来の活動基盤そのものが揺らぐ状況が続いた。加えて、「こんな大変な時期に学生の活動なんてするべきではない」という声も多く聞かれた。

コロナ禍による経済的な影響も深刻だった。アルバイト先の休業や廃業が相次ぎ、学費や生活費をまかなえなくなってしまう学生も少なくなかった。留学同盟員にとってもっとも大きな学習の場となっていた祖国訪問も中止を余儀なくされた。

コロナ禍で新入生に送った図書カードとマスクなど(2020年)

しかし、そのような困難な環境下でも、留学同は歩みを止めなかった。新入生が孤立しないようにと、マスクや図書カードを郵送する取り組みを行い、対面での交流が難しい状況でも支援の手を届けようと工夫を重ねた。また、新入生歓迎会をオンラインで開催し、離れた場所にいてもつながりを実感できるような場づくりにも挑戦した。

各大学が用意している奨学金制度や緊急支援の情報を収集・整理し、分かりやすくまとめて配布したほか、奨学金や授業料免除の申請方法を画像付きで解説した資料も作成した。

学習面でも朝鮮近現代史をはじめとするさまざまなテーマでオンライン連続講座を実施し、学生が自宅にいながら学びを深められる環境を整えた。また、「空いた時間に本を読もう」という呼びかけのもと、「同胞学生の本棚」と題したテーマ別の推奨図書リストを作成し、留学同中央が所蔵する一部書籍については無料貸し出しも行った。さらに読書活動を促すため、図書カードを懸賞とした読書感想文コンクールも開催した。加えて、講習会は対面とオンライン配信を併用して行われ、状況に合わせて参加しやすい形が工夫された。

留学同YouTube連続講座(2020年)

2020年は、学生の網羅数や名簿拡大数など、あらゆる数字が大きく落ちてしまったが、この頃のさまざまな工夫が功を奏し、コロナが落ち着いてきた2022年頃からは全ての活動がコロナ禍以前よりも大きく盛り上がった。

運動の転換の大きなきっかけの一つになったのが、2022年5月28〜29日に行われた総聯第25回全体大会だった。金正恩総書記が大会参加者に寄せた書簡は、「在日本朝鮮留学生同盟も日本大学に通う同胞青年学生との活動を粘り強く展開して、彼らが朝鮮の精神、民族の魂を持って生きるように導くべきです」と言及。留学同は書簡で示された課業を達成するために奮闘した。

大会後、どの団体よりも早く書簡を貫徹するための今後のビジョンを示そうと、9月4日に綜合文化公演「チョンダルセ」を東京で行った。現地・オンライン合わせて1000人以上の人々が観覧したこの公演では、演劇やサムルノリ、農楽や合唱に加え、同胞第一主義を留学同の学生たちに具現するため、全ての専従活動家が日本の国家資格であるキャリアコンサルタントを取得して同胞学生のキャリア形成を手助けするなど、今まで以上に同胞学生自らが参加したいと思えるような組織に変革していくことなどが示された。

綜合文化公演「チョンダルセ」(2022年)

また、同胞学生たちの民族性を育むための活動も大きく変革した。

まず、日本の社会に埋もれた同胞学生を見つけ出そうと特に2022年度以降、名簿拡大事業に大きな力を注いだ結果、今や日本学校出身生だけで年間200人を超える学生を見つけ出している。

そうして見つけた学生たちに民族の心を取り戻そうと、2021年よりスタートした日本学校出身生を対象とした中央行事「民族文化フェスタ ウリ」をさらに発展させ、より多くの同胞学生を巻き込んだ。

「民族文化フェスタ ウリ」(2023年)

さらに、日々のウリマル学習にも力を入れている。「1モイム1ノレ」運動を展開し、学生が楽しみながら朝鮮の歌を歌える環境づくりも進めてきた。学習の成果を確かめるとともに、より多くの学生を巻き込むきっかけとするため、「ハングル検定」の準会場を設置し、留学同で集団受験ができる体制も整えた。

このように留学同ではコロナ禍というかつてない非常事態にも負けず、むしろ運動を発展させてきたのだ。

【留学同中央】

民族性を獲得するための運動

在日朝鮮人学生が日本の大学に通いながら民族性を獲得することは本来非常に困難なことである。

2017年、駒澤大学に通うある学生が、留学同活動の中で民族心と問題意識を育み、それまで通名だった大学の登録名を民族名に変更しようとした。ところが大学側がこれを拒否、1年後に変更を認めた際も「こうしたお願いをすることについて深くおわび申し上げます」といった文章に署名するよう求めた。民族名に変更したい一心でこの文章に署名をしたが、在日朝鮮人学生が民族名を名乗ることになぜこのような長い期間や「おわび」が必要なのかとモヤモヤが残った。

これに対して、この学生が卒業後の2021年、留学同東京を中心とした学生たちが署名運動を展開。「歴史的背景に対する配慮を欠いた対応だった」との学長メッセージと今後はこのような事が起きないよう対策を講じるとの発言を引き出した。

このように留学同では、在日朝鮮人学生が民族的に生きようとすることを妨害するあらゆる動きに対しても行動を起こしている。

(朝鮮新報)

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