〈トンポの暮らしを支える/こちら同胞法律・生活センターです!64〉義務化が始まる住所変更登記
2025年11月19日 15:11 寄稿本連載ではこれまで、在日同胞の不動産相続登記と義務化について繰り返し取り上げてきました。昨年4月から相続登記の義務化制度が実施されましたが、実際の実務においても日本の方、在日の方、国籍を問わず相続登記の依頼が増加傾向にあります。
近年、日本では少子高齢化社会が進むなか「所有者不明土地問題」が社会問題となっており、全国のうち所有者不明土地が占める割合は九州の大きさに匹敵するとも言われています。そんな社会問題を解決するべくして相続登記が義務付けられたわけですが、この制度に加えて、2026年4月から住所氏名変更登記の義務化も開始することになりました。今回は来年からの新制度について取り上げたいと思います。
また、住所氏名変更登記の義務化に伴い、「半自動的」に住所氏名変更登記を行ってくれるスマート変更登記というシステムが併設されましたので、こちらも併せて説明いたします。これらは不動産を所有する在日同胞はもちろん、これからマイホームや投資物件を購入する同胞の方たちにとっても知れば得する大事な新制度となります。
Q いつからはじまるの? 放置したらどうなるの?
A 住所氏名変更登記の義務化は2026年4月1日から制度が始まります。
詳しく説明すると、不動産の所有者は氏名や住所に変更があった場合、その変更日から2年以内に変更登記することが法律上の義務となります。具体的には引越しをして住民票に変更があったとき、結婚などで氏名に変更があったときなどにこの手続きが必要となります。
2026年4月1日以降、この手続きを行わずに放置しておくと過料というペナルティが発生してしまいます。金額としては5万円以下と定められています。また、2026年4月1日以前に不動産を所有されている方も対象となり、手続き開始日の2年後である2028年3月31日までに住所氏名変更登記を行わないと過料の対象となってしまいます。
Q 半自動的に住所変更を行ってくれるスマート変更登記とは?
A 住所氏名変更登記の義務化が始まることに伴ってスマート変更登記というシステムが新たに導入されました。
どのような仕組みかというと、法務局が住基ネット(住民基本台帳ネットワーク)と連携し、不動産所有者が引越し等により住所変更すると所有者に通知(手紙またはメールを選べます)が届き、それに返信すると本人の了承を得たうえで、法務局が職権で住所変更登記を行ってくれるというものです。
要は返信さえしっかりすれば、無料で住所変更登記を法務局が「勝手に」行ってくれるということです。返信しないと行ってくれないため、ここでは「半自動的」と表現しております。
具体的な手続きとしては登記する際に「検索用情報」として、従来通り、①住所、②氏名に加えて③生年月日、④氏名のフリガナ⑤メールアドレス(※メールアドレスの登録は任意)を記載します。司法書士に依頼していれば、基本的には登記する際、セットでやってくれます。おそらく今年の4月21日以降に不動産を購入された方は依頼した司法書士からこのような説明があったのではないでしょうか。なお、在日同胞の場合、日本においては外国人となるため、住民票に記載があれば通称名での登記も可能となります。
2025年4月21日以前に不動産を取得された方が、スマート変更登記を利用するには、別途で「検索用情報」の申出を行わなければなりません。こちらの手続きは割と簡単ですので、法務局に出向いて自分でやってみるのもありかもしません。
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相続登記や、住所氏名変更の義務化などの法律や登記制度は時代の流れとともに変化していき、人もそれに対応しなければなりません。ご不明なこと、不安に思うことがありましたら、同胞の司法書士はもちろんのこと各地域に専門家がいますのでお気軽に相談してください。
(金豊徳、司法書士、同胞法律・生活センター相談員)