〈トンポの暮らしを支える/こちら同胞法律・生活センターです!63〉年末調整の仕組みと2025年の変更点
2025年10月24日 12:04 寄稿今年も早いもので年末調整の季節がやってきました。今年は所得税法における改正(2025年12月1日施行、2025年分所得税から適用)が話題になっていますので、年末調整の仕組みを確認しながら、改正内容についても触れたいと思います。
■年末調整とは?
1年間の給与(賞与)から控除した所得税の合計額と、最終的な年税額との差を調整することです。
会社は毎月、所得税を概算で計算・控除しており(源泉徴収)、最終給与で正しい所得税を計算・調整します(年末調整)。
■年末調整の対象となる所得は「給与所得」のみ
日本には、事業所得、不動産所得、雑所得(年金収入など)、一時所得(生命保険の一時金など)など10の所得がありますが、その中でも年末調整の対象となるのは給与所得のみです。年末調整をしたうえで、それ以外の所得(源泉分離課税などの確定申告不要な所得を除く)がある場合は、原則として確定申告が必要です。また、給与所得のみであっても、年収2千万円超や非居住者、乙欄適用者は年末調整の対象外です。
■年末調整の仕組み
それでは、実際の年末調整の仕組みと計算の流れを見ていきましょう。複雑そうな年末調整の仕組みも、分解して考えると理解しやすいです。
① 収入から、給与所得控除(いわゆる「サラリーマンの必要経費」)を差し引いたものを所得といいます。給与所得控除は段階的に金額が決まっていますが、今回、この給与所得控除の額に一部変更(増額)があります。
② ①で算出した所得からさらに所得控除額を引いて、課税所得を算出します。今回、この所得控除のうち、基礎控除と扶養控除に変更(増額)があります。
(*1)基礎控除については、2025年および2026年の特例措置として、さらに所得に応じて段階的に控除額が加算されます。(租税特別措置法第41条の16の2)
(*2)今回新たに特定親族特別控除(居住者が生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族を有する場合に受けられる控除)が新設され、その扶養親族の所得に応じて、段階的に控除額が決まる仕組みとなりました。
③ ②で算出した課税所得に計算式を当てはめて、所得税を算出します。
なお、住宅ローン控除がある場合は、所得税額から直接控除額を引くことができるため節税効果が高く、このことを「税額控除」といいます。
④ 最後に、所得税に復興特別所得税率(2.1%)を乗じて、年税額を算出します(100円未満切り捨て)。以下は実際の計算例です。
源泉徴収票に当てはめると、以下のようになります。
■実際の年末調整の手続きは?
一般的に、10月下旬から11月にかけて年末調整を実施します。最近はクラウドシステムを利用する会社が多く便利になりました。スケジュールを確認のうえ、自身で用意すべき資料を手元に用意して、期限内に申請手続きを行いましょう。
<用意すべき資料の例>
・保険料控除証明書(医療保険や地震保険に加入している方)
・小規模企業共済等掛金払込証明書(iDeCo(確定拠出年金)をやっている方)
・住宅ローン控除申告書、借入金残高証明書(住宅ローン控除がある方)
・前職の源泉徴収票(本年中に前職等で給与所得がある方)
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年末調整やその変更点に関し詳しく知りたい方は、社労士をはじめとする専門家に相談できるセンターまでご連絡ください。
(鄭景心、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーとして都内スタートアップで人事を担当、同胞法律・生活センター相談員)




