外務省“遺骨は朝鮮含む全ての遺族に”/長生炭鉱関係者らが政府交渉
2025年10月22日 13:00 社会DNA鑑定未だに実施せず

21日、参議院議員会館で市民団体「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」(以下、刻む会)が国会議員らと共に今年4回目の政府交渉に臨んだ。
長生炭鉱をめぐっては刻む会が、1942年の水没事故によって犠牲となった183人の遺骨(朝鮮北部出身者5人を含む)の収容を目指して活動している。
今年8月末には潜水調査によって頭蓋骨など一部の遺骨収容に成功。遺骨収容は国側の「『見えない遺骨』に予算を使えない」という理屈を崩す決定的なきっかけとなった。
9月9日の政府交渉では、外務省が朝鮮の遺族の存在を認知していることが確認された一方、DNA鑑定が実施されていない実態、財政支援に対する国側の消極的な姿勢が露呈した。
9月18日には潜水調査を行ってきたダイバーの伊左治佳孝さんと刻む会、厚労省の間で政府説明会が行われた。その場で刻む会は、厚労省に安全性確認のためのボーリング調査などを提案。厚労省は検討する旨の回答をした。
今回の交渉の場には国側から外務省、厚労省、警察庁の担当者が出席。最初に、刻む会の井上洋子共同代表が犠牲者29人分となる遺族のDNA型データを警察庁の担当者に提出した。
交渉で外務省担当者は、本紙のインタビューに応じた朝鮮の遺族の存在を認知しているとし、朝鮮の遺族を含む全ての遺族への遺骨奉還という人道的原則は揺るぎないと述べた。
一方で①ボーリング調査など刻む会の提案に対する検討②DNA鑑定の実施については実質的に一切の進展がないことが判明。厚労省は「安全性の懸念」を盾に、財政支援を検討する状況にないという従来の姿勢を崩さなかった。
交渉後の記者会見で刻む会の上田慶司事務局長は、外務省から先述の回答を引き出せた意義を強調。そして、国側の不誠実な姿勢に怒りを露わにしながら、DNA鑑定の実施と国側の現地訪問を強く求めた。また、12月19日まで進展が見られない場合、独自にDNA鑑定を行う考えを示した。
(高晟州)
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