公式アカウント

岐阜初中便り⑤生徒に学んだ3年間

2025年10月15日 09:22 民族教育

9月2日から4日にかけて、在日朝鮮学生中央体育大会が東京の駒沢オリンピック公園総合運動場での中級部サッカー競技が行われた。

本校の中級部サッカー部は、部員が3年生1人なので、今年も合同チーム「リョミョン」(愛知中高・長野初中・静岡初中・四日市初中・岐阜初中)として出場することになった。

学生中央体育大会に出場した合同チーム「リョミョン」

今大会には、選手も私自身も懸ける思いがとても強かった。生徒にとって中級部最後の公式戦であったからだ。

思い返せば、この3年間は生徒にとって楽な道のりではなかった。

中級部1年生の頃、かれは運動が苦手で、運動部に入らない予定だった。だが部活がサッカー部しかなく、入らざるを得なかった。

こうして始まった部活なので、最初はやる気がなかった。さらに部員は一人。だから練習は常に私とマンツーマンになり、逃げ場のない日々が続いた。

とくに最初の1年は、私が新任でわからないことが多かったため、理不尽に厳しい言葉をかけてしまうことも多かった。生徒は練習中に泣き出すこともあり、そのたびに、叱られながらも一人でボールを追い続ける姿が今でも忘れられない。

中級部2年生までのかれは、練習をやらされているという気持ちが強く、なかなか自分から動こうとしなかった。私も何とかやる気を引き出そうと、時に励まし、時に厳しく声をかけたが、思うようにいかない日々が続いた。

だがある日を境に練習に臨む態度が変わった。自分が最高学年になり「リョミョン」で副主将を任されたのだ。責任ある立場を与えられたことで、かれの中に芽生えた自覚が、これまでの受け身な態度を大きく変えた。家でも自主練を行い、自分の課題にも真剣に向き合うようになった。

大きく成長した生徒とともに

迎えた学生中央体育大会。どの試合も厳しい戦いだったが、かれは最後まで諦めず、全力でピッチを駆け回った。合同チームの仲間と一つになり、互いに励まし合う姿を見て、この3年間の努力は決して無駄ではなかったと感じた。

帰り際に生徒が「今まで、試合といえばすごく時間が流れるのが遅く感じましたが、今回のすべての試合は、流れる時間が早く感じたし、とても楽しかったです」と満足げに話してくれた。この言葉に胸が熱くなり、これまでの時間が報われたような気がした。

この3年間を通して、生徒一人と向き合う大変さをかれから学んだ。そして、人数の多さや環境ではなく、教員の確かな信念と情熱があれば、どんな生徒からも無限の可能性を引き出すことができるのだということもかれから学んだ。

朝鮮学校が縮小する現状の中で、「それでもウリハッキョが良い」と言われる理由は、こうした温かい繋がりと、一人ひとりを大切にする教育の力にあるのだと思う。

今回の経験を糧に、かれが将来ウリハッキョのために力を尽くす人材へと成長してくれることを心から願っている。

そして最後に、かれの成長をいつも温かく見守り、支えてくださった保護者の皆さまに、心より謝意を表したいと思う。

(教員・尹亨奎)

Facebook にシェア
LINEで送る