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経験を共有、校外資源の活用を/学生支援分科の夏期講習

2025年09月03日 14:07 民族教育

学生支援分科夏期講習が東京第5初中で行われた。

「2025年度中央教育研究会学生支援分科夏期講習」が8月9、10日にかけて東京第5初中で行われた。朝鮮学校では、心身における困難や特徴を抱える子どもに対する支援を学校別、地域別で積極的に取り組んでいる。講習会は、このような経験を共有し、各地の教員たちが児童・生徒たちに必要な支援を提供するための知識と方法を習得する目的で開かれた。

チーム力で寄り添う

講習には、北海道から九州まで各地朝鮮学校の学生支援担当教員ら、金安明会長をはじめ在日本朝鮮人医学協会(医協)メンバー、総聯中央や朝鮮大学校の関係者ら40余人が参加した。

総聯中央の宋根学副議長兼教育局長のあいさつで始まった講習ではまず、中央教育研究会の学生支援分科長で、東京朝高学区の「やさしい学校作り研究会」事務局長を務める趙嬉淑さん(東京中高教員)が「誰もが安らかに過ごせるやさしい学校作り」と題して報告した。

趙さんは1990年代後半からの学生支援の歩みを振り返り、22年5月に設立した東京中高学生支援委員会「タジョン(다정※優しいの意)委員会」)の活動について説明。活動は、心配される生徒に対する情報共有および対策樹立、専門家による支援体制作り、学生支援に関する学習会、保護者に対する支援、生徒募集および進路指導など多岐にわたる。

趙さんは委員会の活動の過程で様々な変化が起きたとし、「対象となる生徒に複数の教員が関与することになり、学校生活のあらゆる面で前進を遂げる生徒が多数でてきた。専門家との連携が強化され、保護者が学校に頼るなど信頼関係も構築された。委員会設立の意義は大きい」と強調。学校、教員、家庭、専門家の「チーム力」で対象者の困難と心配に寄り添うことが「やさしい学校」作りだとし、「ウリハッキョを誰もが寄り添い、みんなが過ごしやすい学校にしていこう」と呼びかけた。

続いて、帝京大学文学部心理学科講師の尹成秀さんが、趙嬉淑さんの報告を踏まえ専門家としての気づき、学びについて発言した。

尹さんは、「民族教育をめぐる差別やさまざまな困難がある中で、目の前の学生と保護者、そして時代的な要求に応えてきた先生たちの汗と涙、葛藤と喜びがあったことを再確認できた」とし、民族教育ならではの寄り添い方について、民族教育の現場の実情、同胞社会の強みなど様々な視点から一緒に考えていきたいと話した。

6つの組に分かれ活発な議論が交わされた。

デイスカッションを挟み、学生支援分科の副分科長で大阪中高学区責任者の高香淑さん(東大阪初級教員)と中央学校保健委員会の総合支援教育ワーキンググループメンバーの黄恵美さんが「学校外の資源(福祉・医療)をどう活用するのか」と題して発表した。

高さんは、大阪内の学校と福祉・医療機関とを繋げ調整・補佐する「支援コーディネーター」として活動してきた経験について述べ、黄恵美さんは、学校側が医療・福祉機関と連携するための一般的な方法と課題について発表。教員たちだけで抱え込まないシステム作りが重要だと強調し、福祉・医療とのネットワークを活用することによって、子どもたちにより良い環境が作られると指摘した。

最後に医協東日本本部メンタルケア部会長で総合支援教育ワーキンググループ座長の李舜哲さんが発言。学校外資源として、総聯機関と団体、医協などの専門家、有資格者の卒業生をはじめとする有志などの同胞コミュニティがあるとし、積極的に活用することを呼びかけた。

参加者たちは、「担任が一人で抱え込むのではなくすべての教員、そして外部の力も活用することが大事だということを明確に確認できた」「学校、地域の垣根を越えて協力し合わなければならないし、できると自信を持つことができた」「学生支援の歴史を学び、歴代教員たちの苦労を知った。子どもたちと保護者に寄り添い、ウリハッキョの可能性を広げていきたい」などの感想を述べた。

2日目は、「コこころのクリニック」院長の高富栄さん(医協兵庫会長・児童精神科医)の監督のもと、参加者全員でサイコドラマを制作した。サイコドラマとは演劇の枠組みと技法を用いた心理療法をいう。

サイコドラマの一場面

今回の舞台は今後の学校運営を話し合う「4月の教員室」。参加者たちが知恵を出し合い円満な会議をつくりあげて、拍手と歓声で締めくくられた。

監督を務めた高富栄さんは、「先生たちみなさんが熱心で、教員ならではの視点もあった。良いドラマが出来上がったのは、ここに集まった先生たちの力だ。メンバーがとても良かった」と話した。

医協中央の金安明会長は、教員たちの積極的で明るい姿を通じて「児童生徒を思いやる気持ち、民族教育を守っていこうとする強い気持ちを感じ、尊敬の念を抱いた」としながら、教員たちの資質と意識水準をより高めるためこれからも医協がバックアップしていきたいと話した。

(姜イルク)

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