観光産業の活性化が加速/山岳・海岸を軸に多角的開発
2025年08月18日 09:00 経済朝鮮では近年、国家的な関心のもとで観光産業の活性化に向けた取り組みが加速している。中でも国際的な観光拠点の整備を目指したプロジェクトが本格化し、6月末に竣工した元山葛麻海岸観光地区(江原道)は、その象徴として大きな注目を集めている。
自然が育む潜在力
朝鮮労働党第8回大会(2021年1月)では観光事業の活性化が重要な国家事業として提起され、昨年12月に開催された党中央委第8期第11回総会では観光産業を発展させて国の経済発展と人民生活向上に寄与することに関する課題が示された。
この方針のもと、自然地理的な特性を活かした観光開発が急ピッチで進められている。国土の約8割を山地が占め、東西両側が海に面する朝鮮には、山岳と海岸の両方で豊かな観光資源が存在する。これらを多様な観光スタイルに活用しようというのが、観光産業における朝鮮の戦略だ。
三池淵市(両江道)はその代表例である。白頭山の麓に広がるこの地域では、2010年代後半から大規模開発が推進され、山間文化都市、地方都市のモデルとして注目される存在に成長。現在は同市を複合型の山岳観光地区へと発展させるための取り組みが続いている。
同市には、生物多様性に富んだ白頭山地質公園や、冬季観光の中心地であるペゲ峰スキー場(21年リニューアル)が整備され、観光客を引きつけている。一方で、胞胎山地区など未開発の山岳地帯も残っており、現在は大型スキーリゾートの建設が計画されている。また、観光業のさらなる活性化のため、三池淵空港の改修、観光鉄道の敷設、宿泊・公共サービス施設の拡充など、観光インフラの整備が同時進行で進められている。
東海岸一帯もまた、観光資源が豊富だ。金剛山、七宝山、馬田、金野などの名勝地は、トレッキングやマリンスポーツといったスポーツ型観光、温泉や休養施設を満喫できるリラクゼーション観光、遊覧船や展望スポットから海上景色を望む絶景体験など、幅広い観光スタイルを提供できる。
中でも、7月1日に国内客向けに営業を開始した元山葛麻海岸観光地区は、海水浴場、ホテル、レジャー・スポーツ施設、飲食・ショッピングエリアを兼ね備えた複合型ビーチリゾートとして人気を博している。今後は同地区で得られた開発成果をもとに、各地で多様な大規模観光文化地区を短期間で建設するという国家的な計画が、第9回党大会で正式に確定される見通しだ。
価値向上へ多様な試み
観光資源の開発と並行して、観光産業の活性化に向けた多様な取り組みが進められている。
平壌市では、22年末から「観光記念品展示会」が定期的に開催されており、展示や販売を通じて観光商品の開発・改善が図られている。また対外広報活動にも力が注がれており、朝鮮は24年から2年連続でモスクワ国際観光博覧会(MITT)に参加。観光当局の公式サイト「朝鮮観光」では映像コンテンツの拡充が進められ、旅行者の体験映像も掲載されている。また、観光分野の人材育成に関しても各機関で体制整備が進められている。
こうした中、旅行会社も独自の工夫を凝らして魅力的な観光商品を提供している。例えば、朝鮮国際体育旅行会社は、マラソン、登山、ゴルフ、ボウリング、射撃、水泳、スキー、自転車を楽しむスポーツ観光プランのほか、スポーツ大会の観戦、選手との交流を組み込んだプランを展開。今年4月には、コロナ後初の国際スポーツイベントとなった「平壌国際マラソン大会」の開催にも尽力した。
さらに、観光地の国際的価値を高める取り組みも成果を上げている。5月には白頭山がユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界ジオパークに、7月には金剛山がユネスコの世界文化及び自然遺産(複合遺産)に登録された。これにより、朝鮮が誇る観光地の評価は国際的にもさらに高まりつつある。
各地で進む観光開発に加え、広報や価値向上、人材育成の取り組みが連動することで、朝鮮の観光産業は着実に発展の歩みを進めている。今後の展開にも注目が集まる。
(李永徳)