〈ものがたりの中の女性たち92〉突然息を吹き返すー延朶
2025年08月20日 09:00 文化・歴史あらすじ
新羅のある宰相が率居(ソルゴ)に美人画を依頼する。快く引き受けた画家は、美人を求めて全国をくまなく捜し歩くが、心に留まる女性に中々巡り合えない。そこで船に乗り中国まで足を延ばすが、かの地でもこれといった相手を探すことができない。たまたま寄った酒幕で17歳の少女が目に留まる。少女を描くことを決めた彼は近くに宿を取り、足しげく少女の家に通い酒を吞むうち、少女の家族もかれを親しく迎えるようになる。美しいかのじょの姿をその家でじっと観察し、宿に戻りその姿を描くことを繰り返す。2カ月たつと絵は完成する。率居は少女とその家族に礼を言い、新羅への帰国の途につく。不思議なことにかれが発った後、突然少女は昏倒する。以来目を覚ますことがなく、かといって死んでしまったわけでもない。そうとは知らない率居は、新羅に帰ると宰相に少女の肖像画を披露し、いくつか注意点を告げる。肖像画は人には秘密にする、少女の名は延朶(ヨンタ)、時々その名を呼ぶと少女は絵から出て来る、望めば時々酌もする、ただ決して触れてはならない、と。
画家に言われた通り、普段は肖像画のことは秘密にし、宰相が「延朶よ、ここに」とそっと言うと、彼女は姿を現し、宰相の前に座る。準備させた酒肴を前に、「延朶よ、酌を」と言うと、彼女は静かに卓の前に座り、美しい所作で酌をする。この神秘的な出来事に宰相はいたく喜び、毎晩のように延朶の名を呼ぶ。ところがある日、とうとう我慢できなくなった宰相が延朶のほうに手を伸ばすと…。
第九十二話 肖像画の少女

肖像画の少女イメージ
「肖像画の少女」は、画家率居(ソルゴ)にまつわる口伝の説話である。肖像画のモデルになった少女が