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<本の紹介>僕には鳥の言葉がわかる/鈴木俊貴著

2025年07月13日 07:00 社会

「鳥語」解明にかけた探求の日々

小学館。定価=1,870円(税込)

古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、「動物の鳴き声は快か不快かを表すにすぎず、人間の言葉のように意味を持つものではない」と主張した。「僕には鳥の言葉がわかる」という題目から本の内容をファンタジー、超能力などの類だと想像したなら、それは言葉を持つのは人間だけという古代ギリシャからの思い込みにとらわれているからだ。

本書は、シジュウカラという鳥に言語能力を発見し、動物言語学という新たな学問を創設した東京大学准教授、鈴木俊貴さんの大学時代からの研究過程を記した初の単著だ。

大学時代、種類の違う仲間の鳥たちが互いに違う鳴き声を理解して動くことから、初「鳥語」を発見。週末に必ず出かけた野鳥の観察、風呂なし・築50年の木造平屋の宿に3カ月間ひとりこもり森で行ったフィールドワーク、研究回数を減らさないため買い物にも行かず4週間おかず無し、白米のみで生活した著者の研究熱には頭が下がる。

著者は、さまざまな実験のアイデアと粘り強い観察でシジュウカラが単語にとどまらず、文を作る能力を持つことを証明し、世界的な学会でも賞賛を浴びた。

例えば、「ジャージャー」は「ヘビ」という意味で、「ピーツピ」は「警戒しろ」という意味、「ピーツピ・ヂヂヂヂ」は「警戒して・集まれ」という文になる。

著者は、「人間には人間の言葉があるように、鳥には鳥の言葉がある」と主張し、人間の言葉も動物の言葉のひとつにすぎないと指摘する。

心を通じ合わせることを可能にする言葉は、人間にとって大切である。生き延びるために使われる鳥の言葉は、ヘイトスピーチやSNSでの誹謗中傷など人を傷つける言葉が蔓延する今、人間に言葉の大切さと重みを示唆してくれる。

文章は軽快で読みやすいうえに、著者自身による本文中の挿絵もとてもわかりやすい。また、巻末にシジュウカラの鳴き声にアクセスできる2次元コードがついているのも本書の魅力だ。

(侑)

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