〈月間平壌レポート2025年5月〉「力こそ幸福」、新市街地に喜びあふれ
2025年05月31日 13:33 共和国大建設の現場で考える「戦争と平和」
【平壌発=金淑美】国家経済発展5ヵ年計画(2021~25年)遂行の最終年である今年、経済や暮らしの現場の熱意はいつになく高い。年初から全国で広がる増産運動の熱気を肌で感じるべく、運動を先頭で率いる祥原セメント連合企業所(黄海北道祥原郡)を訪ねた。

祥原セメント連合企業所のファン副技師長。「心臓部」である焼成炉の前で
平穏な日々、明日への希望
近年、朝鮮では人民経済部門の12の重要目標を2年連続で超過達成するなど、経済が堅調な成長ペースを維持している。そんな中、5ヵ年計画最終年であると共に朝鮮労働党創建80周年を迎える今年、全国に先駆けて、さらなる増産目標を掲げたのが、祥原セメント連合企業所だった。目標値は「昨年の増産量の10倍」。5月末現在、4ヵ月間連続で増産記録を更新中だ。
その要因について、ファン・グムチョル生産副技師長(64)は、10余年の間にセメント焼成路をはじめとするすべての生産設備を更新し、生産能力を1・6倍に引き上げたこと、さらに今年に入って新たな増産技術を開発したことだと話す。「セメント生産において焼成炉は心臓部。焼成炉が稼働すればすべての生産工程が動く。われわれの焼成炉は一度、稼働し始めたら、止まることはない」と言い切る。
国内屈指のセメント生産拠点である同企業所。これまでも国家建設において大きなウエイトを占めてきたが、平壌市5万世帯住宅、農村住宅、地方産業工場、三池淵や元山葛麻のリゾート地、昨年水害に見舞われた北部の復旧まで、大規模建設が全国で展開される今、同企業所にはかつてなく重要な働きが求められている。ファン技師長はいう。
「この10年間で朝鮮は変わった。変わっただけではない、国が強くなった。世界中が混沌とする中、われわれにはそんな不安はあるか? 力こそ幸福だ。力があってこそ、心置きなく平和的な建設を行い、子どもたちがしっかりと育つ。まだ裕福ではなくとも、平穏に暮らし、明日への希望がある。これが幸せでなくて、何が幸せだというのか」
パレスチナに対するイスラエルの大殺戮、インド・パキスタンの衝突、グローバル規模の貿易戦争。世界各地で武力、イデオロギー、覇権主義がぶつかり合う危機の時代に、ファン副技師長が話した言葉は重く、そして尊く響く。
月初に、先月竣工したばかりの和盛地区3段階のニュータウンを訪れた。ファン副技師長はこの一帯の高層ビルにも祥原セメント連合企業所のセメントが使われていると話していた。ちょうど前日までにすべての世帯の入居が完了したという新市街地の街角には、新居をもらった住民と祝福に訪れた知人、友人たちの明るい声が響き渡っていた。
この国の勤労者たる誇り
メーデーを迎えた1日。大衆スポーツが盛んな朝鮮では、この日に際して職場をはじめとした各所で運動会が催される。
雨上がりの昼下がり、平壌ホテルの運動会でもスタッフたちの運動会が行われた。大衆スポーツといえどもあなどるなかれ。勝負事に対する朝鮮の人たちの「本気度」たるや並大抵のものではない。勝てば狂喜乱舞、負ければこの世の終わりかのごとく涙する。5人6脚や風船割りなどの競技の熱気もさることながら、応援の熱、そのクオリティーは過去のそれと一線を画すものだった。
爆笑をさらったのは、「金剛山の八仙女」ならぬ「五仙女」。「衣装が足りなかった」らしい。仙女に扮した女性スタッフが水浴びを楽しんでいるところに、伝説の筋書き通り、天から戻ってくるようお達しが来る。あろうことか、スマホで。仙女の一人がチョゴリの懐からスマホ取り出し、「あーはいはい、帰ります」。それを「現代版八仙女だよ!」と自信たっぷりに教えてくれた。さらに仙女役をこなしたスタッフらが、運動会の最大の見せ場であるバレーボールの決戦に厚化粧のまま出場、オニの形相で戦うというオチ付き。最後は、優勝チームの「われらは朝鮮人」の合唱で大団円のうちに幕を閉じた運動会。集団のため、勝利のため、名誉をかけて全力を尽くし、心の底から楽しむ。朝鮮の人々ならではの人間らしい一面だ。

平壌ホテルスタッフの迫真の演技による現代版「金剛山の“五”仙女」
夕方には、メーデーに際した特番が放送された。ニュータウンに入居した労働者、増産の成果を挙げた労働者に続いて登場したのは、映画「民族と運命 労働者階級編」に出演した俳優たちだった。「労働者の信念が揺らいだら、この国が揺らぐ」。映画の名台詞が流れた瞬間、隣で見ていたホテルスタッフが突如、泣き出し、こう言った。「今も昔も、この国を下支えする労働者、勤労者がいて、祖国が輝いている」。その姿に、運動会での抱腹絶倒、大盛り上がりの根底には、自らの力で国家を築いていくこの国の勤労者たる誇りがあるのだと感じた。
(朝鮮新報)