AIを発展の推進力に/朝鮮で加速する開発と導入
2025年05月24日 11:45 共和国科学技術の発展が世界的に加速する中、朝鮮で人工知能(AI)技術の研究と活用が進展している。朝鮮では、教育、農業、産業、国防、医療などの分野において、AIが現代化と発展を支える推進力として導入され、国家の繁栄を実現する重要な手段として位置づけられている。
大学から技術革新
朝鮮におけるAI研究の中核を担うのが、金日成総合大学情報科学部の人工知能技術研究所だ。同研究所は、音声認識、文字認識、機械翻訳といった応用技術で顕著な成果を上げ、国家的情報化・デジタル化の推進役として注目されている。近年の全国情報化成果展覧会でも、その研究成果は高く評価された。
代表的な成果の一つが、機械翻訳サービスシステム「龍馬」だ。英語、中国語、日本語、ロシア語、ドイツ語、フランス語、スペイン語といった主要言語間の双方向翻訳を高精度で実現するこのシステムは、国内ネットワークやスマートフォンを通じて広く提供され、資料の読解や業務支援に活用されている。同研究所は、教育、農業、医療分野における情報化・管理システムの開発にも力を入れており、実用的なAI応用ソフトウェアを次々に生み出している。
平壌コンピュータ技術大学でも、教員と学生の協力のもとクラウド計算、意思決定支援、健康管理、工場業務支援などに用いるAIプログラムの開発を進めており、研究成果を社会に応用するための実践的な教育体制が整えられている。
また、平壌機械大学では、火力発電所の蒸気供給量を正確に把握する新たな計測システムを開発。従来は測定が困難だった蒸気の流量を、温度・圧力の変化とAIによる情報処理技術を組み合わせて高精度に測定できるようにした。このシステムは東平壌火力発電所で実用化され、大きな経済効果を生んでいる。
各分野で新たな動き
AIの導入は教育現場で本格化している。平壌中等学園や金亨稷師範大学などではAIを活用して生徒、学生の性格や能力を分析し、それぞれに適した個別指導を行う体制が整えられている。教員の力量評価や授業の質向上にもAIが活用され、教育の科学化と個性重視の環境づくりが進められている。また、子ども向けの知能教育にはAI技術を用いた音声図書が導入されている。
農業分野では、江東総合温室農場で導入された野菜の生育状況判定システムにAI技術が応用され、精密な栽培管理と養液の節約が可能となった。各地で利用されている遠隔農業支援プログラム「黄金の実」は、専門家と対話し栽培や病害対策の支援を受けるシステムで、今後はAIによる自動応答型への進化も模索されている。
産業界では、昨年の朝ロ情報技術製品展示会に出品された顔画像復元プログラム「鮮明」が注目されており、集合写真などでも個別の顔を高精細に再構成できる技術として評価が高い。平壌市内の工場で生産されている「チンダルレ」ブランドの携帯電話では、音声認識や画像認識、機械翻訳といったAI技術の開発と導入が進められており、製品改善やサービス向上に活かされる見通しだ。
国防分野においてもAIの重要性が増している。近年は戦略偵察用無人機や自律的に目標を攻撃するAI搭載型無人兵器などの開発が加速し、兵器のスマート化が進展。これらは、国家的展望計画のもとで中長期的に推進される重点分野とされ、関連研究・開発が強化されている。
医療分野でも、AIによる体質分類の精度向上や保健情報システムの開発が活発化し、診断・予防の高度化に向けた取り組みが行われている。
国際協力で広がる可能性
こうしたAI技術の発展と並行して、国際協力の枠組みも構築されている。2024年に朝鮮とロシアが締結した包括的戦略パートナーシップに関する条約・第10条では、人工知能を含む先端科学技術の分野での協力強化と共同研究の推進が明記された。この条約により、朝鮮のAI研究がより広範な国際的ネットワークの中で発展する可能性が高まっている。
国内では、近年の全国情報化成果展覧会で行われているAIプログラム競技会を通じて、若手開発者たちの創意と能力が競われている。このような取り組みは、AI分野における人材育成と技術力向上を両立する貴重な機会となっている。
AI技術は、朝鮮の国家建設と経済発展を支える中核的要素の一つとしての役割を果たしつつある。同技術の今後の発展がいっそう注目される。
(朝鮮新報)