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〈読書エッセー〉晴講雨読・一世の思いを語る白宗元『語り継ぐ在日の歴史』/任正爀

2025年04月18日 15:00 寄稿

以前、本欄で在日朝鮮知識人の生きざまを綴った本として、白宗元『戦争と植民地の時代を生きて』を紹介したことがある。残念ながら、著者は今年2月に他界されたが、今回は追悼の意を込めて2015年に三一書房から出版された『語り継ぐ在日の歴史』を取りあげたい。

『語り継ぐ在日の歴史』

「体連顧問(白宗元先生)は、自分は新報社にお世話になった、かれらは厳しい状況下で働いている、自分に何かあれば、あれこれ整理して残ったお金を新報社に持って行くようにとおっしゃったという。かのじょ(ご息女)はわたしたちに封筒を差し出した。筆者は涙があふれ、どう対応したらよいのか迷った。故人の意志、遺族の心を刻み、そのお金を朝鮮新報創刊80周年の祝い金として受け取った。総聯と在日朝鮮人運動が歩んできた歴史、それは愛国の志から始まり、その志を譲り、受け継いできた歴史だ。その小さな単位が家族だ。70周年、80周年の記念日を見据える今、すべての愛国家族に敬意を表したい」

本紙3月末に掲載されたコラム「春夏秋冬-志を受け継ぐ」のなかの一文である。実は、先生のご息女は筆者が会長を務める在日本朝鮮人科学技術協会(科協)の事務所にも来られ、先生のご遺志として封筒を置いて行かれた。思いがけない出来事に衝撃を受けたが、同様なことが新報社にもあったことを知り、改めて胸を熱くした。そして、先生が託された思いを考えようと『語り継ぐ在日の歴史』を手にした。

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