公式アカウント

〈本の紹介〉DTOPIA/安堂ホセ 著

2025年02月03日 16:43 文化 社会

テーマの過剰さと批評性で注目

河出書房新社/本体1760円(税込)

第172回芥川賞受賞作。舞台は、世界各国10人の男がポリネシアのリゾートに集まり、ただ1人のミスユニバースを射止めるために競い合う恋愛リアリティショー番組「DTOPIA」。「バチェロレッテ・ジャパン」の単なる小説版と思わせる冒頭だが、物語は次第にマイノリティー、人種、植民地主義、パレスチナ、LGBTQ+などのテーマを扱いながら、番組出演者の井上汽水とその幼馴染「モモ」との関係を巡る物語へと変容する。

作中で「おまえ」と呼称される井上汽水は日本と韓国のダブルルーツであり、「Mr.東京」の名で番組に出演。小説の語り手であるモモは、「DTOPIA」で起きた事件をきっかけに途中参加し、汽水と再会する。中学校で出会って以来、とある出来事をきっかけに縁遠くなった二人の過去が明かされていくのだが、その回想方法は従来の小説とは一線を画している。

Facebook にシェア
LINEで送る