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〈ものがたりの中の女性たち86〉「憂い多き婦人たちを解き放つのだ」―麹襄将軍

2025年01月27日 08:00 文化・歴史

あらすじ

天君が治める国は、臣下である仁、義、禮、智、喜、怒、哀、楽、視、聴、言、動などが各々の職務を滞りなくこなし、人々は太平の世を謳歌している。ところが天君は学問にだけ没頭し、無極翁と共に歴史の公証にのめり込む。すると哀公が頻繁に悲しみに暮れるようになる。天君は不安に駆られ外遊を望むが、主人翁に諫められ諦めることになる。ある日、天君の前に屈原と宋玉がみすぼらしい姿で現れ、荒れ地の果てに築城し、そこに住むことを願い天君に許可を請う。天君が許すと、いつしか昔の忠臣や義士、農民や婦人たちなどの中で無辜の罪で殺された者たちが続々と集まり始め、砂漠に愁城を築き始める。

城には弔古臺と忠義門、壮烈門、無辜門、別離門など4つの門を設け、城の者たちは絶えず不安と愁いの中にあり、ついには天君に影響を及ぼすようになる。天君は気力を失い、虚無に襲われるようになる。

危機に瀕した天君に、主人翁は愁城―愁いの城をなくすための方法を提案し、麴襄将軍を推薦する。孔方(お金)が將軍を招き愁いの城を攻める。將軍は毛潁(筆)を呼び、天君の命により兵を率い愁いの城を攻略し勝利を収める。城を覆った愁いは晴れ、城には活気が戻る。そしてまた天君の国は平穏を取り戻すことになる。

第八十六話 愁城誌

「愁城誌」原文

「愁城誌(スソンジ)」は朝鮮王朝中期に林悌(リムジェ) (1549~1587)が創作した漢文小説であり、人の心と感情を擬人化した暇傳體小説。

暇傳とは寓話と擬人化の手法を用いた短い伝記方式の説話のことである。花や動物、酒や化粧品など、擬人化された作品は多いが、人の心やその心情、感情などを擬人化した作品は多くはない。人間の心の調和の必要性を力説、人間の心根である天君が愁城(愁いの世界)を克服し、虚無を払いのけ、酒宴を設け明朗さを取り戻すという内容は、人間の理性と感情など心の作用に偏りがなく、調和を重んじるべきだと説いている。

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