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西東京で映画上映会と講演会/関東大震災朝鮮人虐殺と関連して

2024年12月01日 08:00 歴史

後世のために史実に向き合って

関東大震災朝鮮人虐殺の歴史を記憶し、悲劇を繰り返さないことを目的とした映画上映会および講演会が22日、東京都町田市の町田市民フォーラムで開催された。西東京朝・日大学生ネットワーク、同胞生活ネットワーク、まちだ良い映画を観る会が共催した同イベントは、101年前に関東一円で発生した関東大震災当時、約6千人に及ぶ朝鮮人が官民一体の虐殺犠牲者となったことについて、朝・日の市民が改めて向き合い考えていこうと企画された。西東京地域では11年ぶりの関連行事となり、今年9月にはプレイベントとなるパネル展が行われた。

関東大震災朝鮮人虐殺と関連した映画上映会および講演会が開催された。

行事でははじめに、1983年に製作された記録映画「隠された爪跡」(呉充功監督)が上映された。映画は、関東大震災を体験し、朝鮮人虐殺を目撃した在日朝鮮人1世の故・曺仁承さんなど20人の証言者が、当時について語る映像で構成されている。この日会場には、映画を通じ初めて体験者の声に触れる面々もいた。

つづいて、昨年の虐殺100年に際し初公開され注目が集まった、震災当時の惨劇を描いた絵巻物「関東大震災絵巻」(淇谷作)の所有者であり、高麗博物館前館長の新井勝紘さんが講演を行った。

新井さんは講演で、関東大震災朝鮮人虐殺と関連する昨年の国会質疑で、「記録がない」と述べたうえで朝鮮人虐殺に関する再調査はしないとの見解を示した日本政府の対応に言及した。そのうえで「上映された映画の中でたくさんの人々が証言していたように記録はある。虐殺をなかったことにしよう、隠そうという政府の姿勢がありありと感じられる」と強く批判した。

会場ロビーに展示されたパネルを見て回る来場者たち

この日の講演では、新井さんが朝鮮人虐殺に関心を持ち関連絵画などを集めるようになったきっかけや、所有する作品などについての紹介、解説があった。同氏は、過去に町田市役所で勤務した後、国立歴史民俗博物館(千葉県佐倉市、以下歴博)で働くことになった。以降、近現代展示を担当した新井さんは、ある時、関東大震災をテーマに常設展示を企画。議論の末、「朝鮮人虐殺を避けて通るわけにはいかない」と、当時の虐殺に関するコーナーを設けたそうだ。それが契機となり、各地の関連資料を集める過程で、虐殺を目撃した小学生や童画家・河目悌二、日本画家・萱原白洞による関東大震災朝鮮人虐殺関連画と出会った。

新井さんは、講演後の質疑応答で、世界的な紛争やヘイトスピーチ、ヘイトクライムといった日本社会に蔓延する排他的な風潮に関しての見解を問われ、「私たちが近く経験するかもしれない災害のとき、関東大震災当時と同じようなことは起こらないと自信を持って言えるか」と問題提起した。そして「今でもヘイトが横行する日本社会の現状は、関東大震災のような惨事が起こる可能性があることを示している。今こそ101年前の史実に向き合い、反省しなくてはならない。教科書や博物館から史実が消される中、私たちが声をあげていかなくてはならない」と訴えた。

この日、客席の後方には、東日本大震災当時、犠牲者を追悼し日本各地の書道愛好家が1文字ずつ書いて集めた作品が展示された。また会場ロビーには昨年の虐殺100年に際し留学同東京のメンバーたちが作成したパネルが展示された。

参加者の声

講演後、昨年公開された絵巻物「関東大震災絵巻」について解説する新井さん(写真左)

記録映画「隠された爪跡」を初めて観覧し証言の貴重さを痛感したと話す鄭麻伊さん(22)は中学高校時代、関東大震災をはじめ日本の加害史や自身のルーツと関わるような歴史を学んだ記憶はなく、留学同活動を始めてから知るようになったという。そのため当初は歴史を学ぶことへの抵抗感もあったと吐露する鄭さん。「自分は在日朝鮮人なのに何も知らなかったんだなと感じた」。

鄭さんは「在日朝鮮人である自分が関東大震災時の朝鮮人虐殺の歴史を知らなかったが、日本人の同世代はなおさら知らないと思う。けれどこの歴史は、朝鮮の歴史でありながら日本の歴史で、かれらにとっても知らなくていい問題ではないはずだ」と述べ、「虐殺によって犠牲となった、または辛い思いをしている先代たちがいることを忘れてはいけないと改めて感じた」と胸の内を話した。

町田市議の佐藤かずひこさんは、「人の命は尊いもの」だと映画の感想を述べた。同氏は、知り合いの議員からの紹介で朝鮮学校の存在を知って以来、西東京第2初中との交流を重ねてきた。同氏は市民間の理解を進めるうえでの交流の大切さを語りながら、「人種、国同士の垣根を超えて尊重し合いながら繋っていければ」と話した。

東日本大震災犠牲者を追悼し書道愛好家らが手掛けた作品

会場には、戦争トラウマについての理解を深めようと訪れた細野正美さん(74、臨床心理士)の姿もあった。細野さんは近年、心理士の仕事をする中で戦争加害の当事者やその後代たちが患うPTSDの現状に直面してきた。

細野さんによると「クライアントさんの中には3代前に加害者としての戦争体験をしていたり、それが今も影響を受けて孫の世代にまで及んでいる」という。その形はアルコール依存やDVなどさまざまで、そうした当事者たちへのアプローチ方法を考えるのと同時に、若い心理士たちにも学びをシェアしたいとの思いで各地の講演会や学習会などに参加してきたという。

細野さんは、「戦争トラウマなど家族の歴史を理解しないと、いまの臨床はアプローチできないのではとの問題意識を持ち勉強する心理士たちも少しずつ増えてきている」と述べたうえで、「加害当事者の子ども世代が向き合おうとしている現状がある。トラウマを患う後世たちを思えば、ひどいことをやってきた事実にまずは向き合うことから始めなくてはならないと思う」と強調した。

(韓賢珠)

関連情報

■呉充功監督作品上映会

日時:12月7日(土)18時30分~(18時開場)

場所:町田市民フォーラム(JR「町田」駅徒歩5分)

内容:関東大震災朝鮮人虐殺と関連するドキュメンタリー映画「払い下げられた朝鮮人」の上映。19時30分からは呉監督の新作「名前のない墓碑」のプレビュー公開。監督によるあいさつとトーク、ゲストを予定。

参加費:1千円

申込み:こちらのリンクから。または以下アドレスまで①お名前、②電話番号をお送りください。machida.eiga@gmail.com

 

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