〈文芸同結成65周年〉新たな躍動のきっかけに
2024年12月12日 09:45 文化記念舞台を輝かせた出演者たち
在日本朝鮮文学芸術家同盟(文芸同)の結成65周年に際し、大阪と愛知で記念公演が行われた。公演に向けて心血を注いだ出演者たちに準備の過程と今後の展望について話を聞いた。
春の風を届ける一心/大阪
1日、文芸同大阪・舞踊部が主催する第9回朝鮮舞踊の夕べ「春風舞輝」が行われた。昨年の秋に開催を決め、1年の歳月をかけて入念に準備された本公演。背景には2018年の第8回公演から6年が経ち、メンバーや同胞たちから開催への期待が高まっていたことがある。舞踊部の金英美部長(56)は「様々な困難が重なる中、大阪の同胞社会を朝鮮舞踊、そして民族の魂を全身で感じられるチャンダンで元気づけたかった。同胞たちの心に、あたたかい春の風を届けたい一心だった」と回想する。
この間、舞踊部の成人組(30代後半〜60代)は毎週土曜日に、青年組(18〜30代前半)は毎週水曜日に練習を行ってきた。公演が近づくにつれ練習の頻度も上がり、出演者たちは仕事や家事をこなしながら夜遅くまで努力を重ねてきた。
その間、新たな同盟員も加わった。「大阪中高の同級生たちが出演すると聞いて、久しぶりにみなで踊りたくなった」ときっかけを話すのは新メンバーの李華瑠さん(23)。李さんは「出演者たちをまとめたり、連絡を回したりするなど陰で支えてくれた役員たちや、家事など多忙を極める中でもひたむきに練習する先輩方の姿に刺激を得た」と振り返る。「同胞に力を与えることができたという実感が湧いた公演だった。何よりも先輩方の背中を見て、自分自身これからも舞踊を引き続き頑張ろうと思えた」(李さん)
また、公演には同盟員のみならず、大阪朝鮮歌舞団、大阪中高舞踊部などに加え「朝青男子」も出演した。混成群舞「春の訪れ」を踊った李泰充さん(26)は舞踊部からのオファーを受け出演した。「一丸となって舞踊を披露し終えて、いつもは感じることができない達成感を得ることができた」とし、「印象深かったのは準備期間に出演者たちの熱意を肌で感じた事だった。それを間近で感じ、同じ舞台に立てたのは貴重な経験となった」と語った。
公演にはさらに、北大阪、東大阪、南大阪、大阪初級から8人の教員が出演した。そこには、日頃から各学校の舞踊部を支える教員たちにも踊る機会を設けようという役員たちの思いがあった。
姜芙美教員(北大阪初級)は文芸同支部の舞踊部に謝意を表しながら「公演後、楽しい時間を過ごせたという反響を聞いて舞踊の力を改めてひしと感じた。この伝統を未来に繋いでいくために、児童たちに民族の心を教える教員として役割を全うしていきたい」と決意を新たにした。
金部長は「懐かしく心温まる公演だったという感想も頂いた。みなが心を一つにし、100%の力を発揮した結果、観客たちとの一体感を演出できたのではないか」としながら「6年ぶりの公演の開催は、出演者たちが朝鮮舞踊を舞い続ける糧になったはず。中間世代といえる30代の層が薄いという課題を克服していくにあたって、非常に貴重なきっかけになった」と手ごたえを語った。
バトン繋ぐきっかけに/東海
7日には、文芸同東海支部が主催する65周年記念公演「聲」が行われた。
東海支部では主に舞踊部が地域の同胞行事や文芸同中央の舞踊コンクールに欠かさず出演することで東海地方における文芸活動の灯を守ってきた。一方、音楽部はピアノコンクールへの参加を軸に、徐々に活動を活性化させ2017年には部内に声楽組を設けた。以降、音楽部独自で実技発表会を行うなど、数年間の努力が実を結び、活動を軌道にのせた。そして、支部主催の公演を24年ぶりに開催するに至った。
鄭和実さん(53、支部副委員長兼音楽部長)は、仕事や家事がある中での練習は「ほんとうに大変だ」と切実に語る。鄭さん自身、平日は仕事に加え、愛知中高と四日市初中の音楽講師として奔走。さらに休日には記念公演の練習といったハードスケジュールをこなしてきた。「自分だけではなく、みながみな同じ境遇」と強調する鄭さんは「その中でも気持ちを一つにして作品を作り上げていく。それ故、完成に一段と近づいた瞬間が何よりもうれしかった」と笑みを浮かべる。一方で鄭さんはこの間、音楽部の演目に携わりながら同盟員たちに文芸同の重要性を「口すっぱく強調してきた」という。
「文芸同の活動はただの趣味になってはいけない。先代たちが文芸同を守ってきた歴史があってこそ、異国の地でも民族の歌、祖国の歌を高らかに歌えることを忘れてはならない」(鄭さん)
舞踊部長を務める尹奈梨さん(44)は「練習期間、技術面でのレベルアップも重要視していたが、出演者自身が楽しむことを第一に考えた」とし、「舞踊だけではなく民族伝統の文化が、いかに素晴らしいか伝えたいという思いを胸に舞台に上がった」と語る。「受け継いだものを後代に繋げたい」と語気を強める尹さんは「サポートしてくれる方々がいて舞台に立てている。その舞台での頑張りは客席の学生たちが今後、文化活動を続けていくことにも繋がると信じてやまない」と語った。
文芸同東海の李恵仁委員長(60)は「文芸同の代が続くようにと生徒たちの演目も用意し、事務局に若い世代のメンバーも加えて準備してきた」という。李委員長は「今後は草創期の核心となった文学部の活性化と同時に同盟員の拡大も進めていきたい」と展望を語りながら、「未来の同盟員たちは今の生徒たちを中心に出てくる。愛知中高・舞踊部、声楽部、吹奏楽部、民族打楽器部と共に彩った今回の公演は、文芸活動のバトンを繋いでいくうえで重要なきっかけになったはずだ」と意義を語った。
(高晟州)