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〈ものがたりの中の女性たち84〉「この体は私のもの、私はあなたの義姉よ」―元氏と南氏

2024年11月11日 08:00 寄稿

あらすじ

朝鮮王朝宣祖代の文官であった元士安(ウォンサアン)の夭逝した義姉南(ナム)氏が、ある日突然彼の未婚の末の妹元氏に憑りつく。元氏は意識がもうろうとし、意味のないことをぶつぶつと呟き、自分が死んだ義姉だと言い始める。元士安兄弟が妹と呼ぶと、彼女は義姉である南氏だと言い張り、あなたたちの妹の魂はそこにあると、窓の外を指さす。

声や身のこなしが南氏そのものである。義姉の霊魂は妹の体から出たり入ったりするらしく、体から義姉が出て行くと妹は床に伏して苦しがり、帰って来ると突然元気になり身だしなみを整え義姉の声と口調で話す。これを繰り返すこと一年余り、妹は徐々に衰弱し絶望的に見える。元氏の両親が故郷である原州(ウォンジュ)の別荘に妹を連れ帰り、鬼神(義姉の霊魂)を避けようとするがうまくいかない。

そんなある日、髭と眉が白く、何か凡庸ではない気を纏った老人が正堂に降り立ち、元家の先祖だと言う。子孫に鬼神が憑りついたと聞き、どうすればいいのかを教えに来たと言う。驢州(リョジュ)と原州の間に牛灣(ウマン)という川があり、数十歩入ると紫の石が無数にある、士安が行って取ってくればわしが選んでやると。元士安は言う通り紫の石を数十個取って来るが、先祖は大声で叱る。偽物だと言うのだ。

再度牛灣に行くと、浅い流れの澱みに数十個の石を見つける。全部拾って先祖のもとへいくと、その内のひとつを指し、これが逐鬼の「警鬼石(キョングゥイソク)」だと言う。龍王の机の上に雌雄であったが、王が外出した隙を見て逃げ出したのだと。先祖の言う通りその紫の石を腰紐に付けると、怪異は嘘のようになくなる。

第八十四話 鬼神を駆逐する石

元士安の妹 イメージ

柳夢寅(リュモンイン)(1559‐1623)の野談集「於于野譚(オウヤダム)」には、この「警鬼石(キョングゥイソク)」以外にも怪談や不思議な話が多く収録されている。人魚や付喪神、えたいの知れない大小の妖怪、霊魂や幽霊、イエティのような毛むくじゃらな巨人など、原文の漢文では「鬼神」、「鬼」などと表現されることが多く、日本でいうところの「鬼」とは少し違う。

「警鬼石」のような「辟邪」や「逐鬼」、「退魔」の「道具」や「呪具」は、他にも「小豆」や「硫黄」、「桃」や「椿」、「神狗」や「龍」、「虎」の絵画、それらが描かれた護符など多様である。鬼神を祓う「もの」の説話の他に、鬼神を積極的に呼び込む「もの」にまつわる説話や、鬼神を使役する力がある「鬼神使い」、鬼神を見る力がある「見鬼」にまつわる説話も多い。

「退魔」の記憶

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