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第1回若手アーティストのコンサート/出演者の思い

2024年10月21日 13:22 文化

夢を届けるピアニストたち

9月27日、同胞や日本の市民ら200人が観覧し盛況の中で開催された第1回若手アーティストたちによるピアノコンサート(東京)。圧巻の演奏を披露した2人のピアニストを紹介する。

親になってみて

第1回若手アーティストたちによるピアノコンサートの1部で幻想曲、8つの演奏会用練習曲第一番「ブレリュード」、「明星」を披露した朴勝哲さん(57)。

朴勝哲さん

今回、若手アーティストたちに交じり演奏した朴さんは、ベテランの安定感と、表現力豊かな演奏で初回という記念すべきコンサートに花を添えた。

朴さんは、こまつ座公演「兄おとうと」でのピアノ演奏が高く評価され、2004年に、ピアノ演奏では初となる読売演劇大賞優秀スタッフ賞(第11回)に選ばれた。その後、ミュージカル「スリルミー」にもピアノ奏者として携わり、二度目となる読売演劇大賞優秀スタッフ賞(第26回)を受賞、名実ともに優れた腕前の持ち主だ。

一方で現在、日本を代表する劇作家・小説家の故・井上ひさし作品を主に、こまつ座公演のほか、新国立劇場などで行われる演劇でも作品に花を添えるピアノの弾き手として関与するなど「在日ピアノ界のエース的存在」(コンサート主催者)といわれる。

観覧にきた朴さんの子どもたちとの一枚

「今回のコンサートで披露した幻想曲は、久しぶりに人前で演奏した朝鮮の曲。朝鮮の曲を弾くと朝鮮学校に通っていた学生時代のことや、金剛山歌劇団の公演などで同胞と共演した当時を思い出す」と懐かしみながら、以前より同胞たちとの共演が少なくなったものの、朝鮮学校に対する思いは変わらないと朴さんは話す。

それは、朝鮮学校に子どもを送る親になったことが影響しているという。

「時代が変わりゆく中でも子どもたちが朝鮮の歌を歌ったり踊ったりする姿をみると言葉では表しきれない、いろんな思いがこみ上げてくる。やはり朝鮮学校で立派に育ってほしいと思う」としながら「自身がピアニストということは、世の一般的なお父さん像とは、少し違うかもしれない。しかしその姿を見た、子どもたちが好きなことを存分に追及し、どんなことにもチャレンジできるよう、これからも在日のピアニストとして夢を届けてあげたい」と目を細めた。

プロフィール

東神戸初中(当時)、神戸朝高出身。桐朋学園大学音楽学部ピアノ専攻卒業。

主な出演作(以下、演劇と舞台)に「焼肉ドラゴン」(新国立劇場)、「太鼓たたいて笛吹いて」(こまつ座公演)、「夢の裂け目」(新国立劇場)、「ぼくに炎の戦車を」(梅田芸術劇場)、「泣くロミオと怒るジュリエット」(Bunkamuraシアターコクーン)

どんな曲でも教えてあげたい

コンサートで金紗永さん(27)は、高度なテクニックを要する「金剛山の木蘭変奏曲」を披露し、割れんばかりの拍手を誘い場内のボルテージを最高潮に引き上げた。

金紗永さん

そんな金さんは、中級部時代に在日朝鮮学生ピアノコンクール20周年記念大賞を受賞するなど、関係者の間では言わずと知れた才能を持つ生徒だったという。

中級部を卒業後は、東京都立総合芸術高等学校音楽科に進学し一層ピアノ漬けの毎日を送った。

「物心ついた頃には、漠然と音楽の道に進むと思っていたが、専門的にピアノを習ううちに表舞台に立つより指導者になりたいと思った。そのためには、中途半端にピアノを弾ける指導者ではなく、自分が誰よりも上手にピアノを弾けるようになりたかった」と学生時代を振り返った。

現在は、Sayongピアノ教室を開設し幅広い年齢の生徒たちの指導にあたっている。ほかにも「音あそび」音楽教室リズム21(幼児音楽教室)で講師を務めている。

中級部まで朝鮮学校に通っていた金さんは、「高校や大学ではめっきり朝鮮の音楽とはかけ離れた」生活を送っていたが、3、4年前、SNSでかつて自身も出演していた在日朝鮮学生ピアノコンクールの映像を目にし、「久しぶりに朝鮮の曲を弾こうと思った」という。それを機に文芸同Webコンテストに応募するなど活動の幅を広げていった。

アンコールに応え連弾を披露した朴勝哲さん、金紗永さん

「大人になった今、こうして朝鮮の曲を弾き、同胞アーティストたちと音楽を介してつながれたことをとてもうれしく思う。今回のコンサートの誘いもとても貴重な体験ができ、ありがたい」と話しながら「人前で演奏するのは大学卒業後初めてのことでとても緊張したが、楽しかった。ウリハッキョに通う幼いピアニストたちが朝鮮の独特で固有な音楽を弾けるよう、今後は本業にさらに力を入れていきたい」と意気込んだ。

プロフィール

東京第2初級、東京中高中級部卒業後、東京都立総合芸術高等学校音楽科を経て東京音楽大学楽器専攻ピアノ演奏家コース卒業。

(李紗蘭)

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