〈読書エッセー〉晴講雨読・浅川巧を語る評伝と小説(下)/任正爀
2024年10月05日 09:00 寄稿1988年に出版された高崎宗司『朝鮮の土となった日本人―浅川巧評伝』(以下『評伝』)によって、浅川巧は多くの人の知るところとなった。在日朝鮮人2世で著名な建築家である伊丹潤(本名庾東龍)は、1983年に出版された『朝鮮の建築と文化』(求龍堂)で柳宗悦の白磁の「悲哀の美」について詳しく言及しているが、浅川巧については簡単な文章の引用に終わっている。この本には彼自身が描いた朝鮮の膳のイラストも多数掲載されており、浅川巧について詳しく書かれていてもおかしくない。済州島に数多くの作品を残し、輝かしい受賞歴を持つ伊丹潤も、当時は浅川巧を深く語る知識はなかったのだろう。
『評伝』が出版されて浅川巧に関する書籍も増えたが、なかでも興味深いのが1994年の江宮隆之『白磁の人』(河出書房新社)と2004年の椙村彩『日韓交流のさきがけ浅川巧』(揺籃社)の2冊である。
『白磁の人』は柳宗悦のもとで研鑽する陶工が浅川巧の存在を知り、彼の足跡を文章に残すという形式の小説である。小説なので架空の人物も登場するが、