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〈ものがたりの中の女性たち83〉「冷水一杯の価値もない詩ですね」―李梅窓

2024年09月30日 08:00 寄稿

あらすじ

扶安(プアン)の官妓である桂生(ケセン)は詩と歌、楽器の演奏にも秀で、号を梅窓(メチャン)と名乗る。ある日、柳塗(リュド)という士人が彼女を訪ねると、自称豪胆な士人金生と崔生が先客として来ている。梅窓は酒肴を用意し、彼らに酒を勧めながら酔うのを待つ。三人は梅窓をじっと見つめ、隙を窺っている。彼女は笑いながら三人にある提案をする。「ありきたりな、退屈な作品は犬にでもやっておしまいなさいな。今まで聞いたこともない、粋な詩を詠む方と、今夜共に過ごすことにいたしましょう」

金生と崔生は既存の作品を諳んじて見せるが、前者は稚拙、後者は、妙味はあれど凡庸と散々な評価。そのため金生は、燕山君の時代の詩人の格調高い作品を諳んじて見せた。すると、月の輝きのような韻だが感動的ではないとの評価。黙って笑っている柳塗に梅窓が促すと、「詩の才などない僕はやることしか知りませんよ 」と嘯く。崔生が気色ばんで「今日は詩で競うんですよ」と言うと、鼻息荒く金生が俗歌のような少し露骨な作品を朗々とした声で詠じる。梅窓がその詩に込められた意味を褒めると、柳塗も黙っていない。「あなた方が詠じた作品はもう陳腐です。僕が目の覚めるような新しい詩で、今日この場に旗を立てますよ」

柳塗が読んだ詩は粋で、洒脱、官能的な余韻に梅窓は言う。

「こんなむさくるしい所に、あなたのようなご立派な方をお迎えできるなんて。お酒をお注ぎいたします。まだ『狂った心』のままなのですね。『霧がかかった瞳、硬貨のような空』、なんと素晴らしい表現でしょう。値千金ですわ。お二方が詠じられたものは、冷水一杯の価値もございません」

これを聞いた金生と崔生は、バツが悪そうに帰って行く。

第八十三話 女性詩人たち

李梅窓の墓所

詩にまつわる古典作品は多い。古典小説や野史、野談、稗説など散文作品の中に、詩が挿入されていることもよくある。

李梅窓の逸話が記録されている「記聞(キムン)叢話(チョンファ)」には他にも、 詩作に秀でた女性たちの逸話や、科挙の受験時、鬼神に詩作の手助けをしてもらったり、追悼詩を捧げると死人が生き返ったり、妓生の詩に感銘を受けた僧が破戒したりと多様である。

梨花雨の詩人

李梅窓(リメチャン)(1573~1610)は宣祖代の扶安(プアン)妓生である。本名は香今(ヒャングム)、字は天香(チョンヒャン)、号は梅窓。桂生(ケセン)(癸生)、桂娘(ケラン)(癸娘)とも呼ばれる。生涯を通して創作した数百首の詩が全国に広まり有名であったが、その死後、徐々に忘れ去られていくことを惜しんだ扶安の下級官吏たちが、1668年に彼女が残した詩の中から58首を抜粋し「梅窓集」を刊行、現代に伝わる。当時の

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