〈私が見た朝鮮 4〉滝沢康子さん
2024年08月03日 09:00 私が見た朝鮮新型コロナウイルス対策が世界的に緩和されるにつれ、朝鮮を訪れる外国人が徐々に増えてきた。実際に足を運んでこそ、先入観や固定観念にとらわれずその国を正しく知ることができる。アジア、アフリカ、ラテン・アメリカなど世界各国の人々が見た朝鮮の素顔、現地で抱いた思いとは−。
世界から集った同志らの眼差し

チュチェ思想国際研究所の尾上健一事務局長(左から2番目)を団長とする代表団の一員として訪朝した滝沢康子さん(左)
飛行機で朝中国境を越え、眼下に見えはじめた朝鮮の地。春まだ浅い山々の黒々とした稜線、その麓には静かにたたずむ住宅群。私たちは身を乗り出して見つめる。ようやく訪ねることができた。長かった月日が大きな感動となって胸に押し寄せる。
空港から乗り込んだ車は平壌の街へと入っていく。立ち並ぶさまざまな形の近代的なビル。家々のベランダや窓辺には色とりどりの花が飾られ、道の両側は新芽を出したばかりの芝生と満開の白や桃色の木花。どこまでも、どこまでも、花に彩られた景色は途切れることなく続いていく。平壌の街の至るところで子どもが元気にかけっこをしたり、新郎新婦を祝福する人々が集ったりしている。
世界各国のチュチェ思想研究者たちが4月のチュチェ思想国際討論会に参加するため、5年ぶりに平壌に集った。複雑な情勢のなかで難しい問題もあったが、自国と世界の正しい進路と発展のために精いっぱい闘い連帯してきた。懐かしい同志らと交わす抱擁と握手。あちらこちらで笑顔の輪が広がる。
同じテーブルを囲む若い女性とは初めて挨拶を交わす。どこから来たのかと質問すると、「ポーランドです。一人で来ました」と。そんなかのじょに、メキシコの青年が声をかける。「あなたはとても勇気のある人です」。私たちの心に新しい同志の姿が刻み込まれた瞬間だった。
久しぶりに再会したメキシコの研究者たちは、古参の活動家から青年活動家まで年齢層が幅広く活気があふれている。かれらが準備してくれたプレゼントは、手作りの立派なチュチェ思想の教材。誰もが視覚的にも理解できるようにと工夫されたノートからは、メキシコ人民に根付いて活動する真心を感じ取れる。一方、モンゴルの研究者たちはチュチェ思想国際研究所の尾上健一事務局長を囲みながら自国での活動について真剣に質問している。モンゴルの研究者たちは若い学者や政府の仕事をしている人たちだった。
タンザニアの年配の大学教授も健在だ。討論に立った教授はアフリカを愛する気持ちからチュチェを実現する道を主張する。帝国主義の援助や投資は隷属の道、アフリカ諸国は団結して自主の発展行路を選ばなければならない、自主の思想だけが帝国主義の支配に反対する闘争を導き、アフリカを人民の手で自力更生させる…。
高麗ホテルのエレベーターから下りると、向こうに座っている青年が待っていたかのように椅子から立ち上がる。「お話を伺いたい、私はドイツで活動しています」。まっすぐな目で見つめるかれに対して、尾上健一事務局長は語りかける。チュチェ思想は自国の実情に応じて学び、実践することが大切だ、と。
研究者たちの真剣な眼差しから、チュチェ思想研究普及活動の重みと意義を熱く感じた期間だった。世界各国から集った研究者たち、私たちの実践はいまから始まる。自国と世界の自主化のために、民衆が自己の力を自覚し立ち上がり、新しい歴史をきり拓いていくために−。私たちは自国での新たな闘いと再会を約束しながら、それぞれの帰路についた。
(チュチェ思想国際研究所事務局員)