【投稿】金剛山歌劇団公演を観て/張弘順
2024年07月07日 09:00 文化・歴史6年ぶりに金剛山歌劇団が水戸に来た。
歌劇団の50周年記念公演である。私はその50年間のほとんどの公演を観ていると自負している。だからこそ、今回も大成功してほしいと期待は増すばかりであった。
私が高校生の時、初めて観た朝鮮の歌と踊り。感激のあまり「私も朝鮮人です!」と言いたくて、公演の後、そのまま立ち去ることができず楽屋の周りをうろうろしたことが何十年たっても忘れられない。
日本の高校から朝鮮大学校に入った私は自分が誰なのか、どう生きていくべきかをはっきり知った。そして1世の先輩たちが、筆舌に尽くせぬ苦しい生活の中でも、後輩たちに民族の誇りと希望、財産を残してくれたことを知った。
その貴重な財産の一つが金剛山歌劇団である。
民族の音楽は、民族の魂そのものだ。何の理屈もいらない。自分の血がさわぎ、熱狂し、そして慰められる。
今回初めて歌劇団の公演を観た日本の友人(60代男性)は公演の翌日こんな感想文を送ってくれた。
「…特に舞踊には大きな感銘を受けました。『あの空の向こうに』では、白鳥の湖にも勝るバレエのような演出と音楽、そして風と音楽の中で流れるような踊り手たちの透明な心を映す美しい舞、圧倒的なクオリティ。『月灯りの下で』も心を打つ舞踊でした。深まる月夜の下で、妖精のように風のように舞う踊り子たちの美しい連舞、静と動のコラボレーションの見事さ。チャンセナプの独奏も魂の演奏、聴衆を虜にしました。その他の出演者も高度な技術とたゆまぬ鍛錬の成果が十分に反映され、聴衆の心に深く届いたと思います」
初めて朝鮮民族の音楽に触れるかれがどんな感想を持つだろうか、民族を超え、私たちの音楽に共感をもてるだろうか、公演が始まる前まで覆っていた少しの不安は開演と共に消え去り、かれの心にも必ず届くという確信に変わっていた。
本当に素晴らしい公演だった。
私はこの3カ月間、一人でも多くの人に観てもらいたくて、同胞はもちろん日本の友人たちに連絡しまくった。そして私の手元から61枚の前売り券がかれらのもとに届き、多くの友人たちが詰め掛けてくれたのだ。
公演の最後に、私は今公演の実行委員長、副委員長と共に花束を持ち舞台に上がった。花束贈呈の役目は私には嬉しいサプライズであり実行委員会の粋なはからいであった。
3つの花束はそれぞれ茨城初中高の卒業生である、団長、ソプラノ歌手、舞踊手に渡された。私は若き日の教え子である団長に渡した。
大好きな金剛山歌劇団。その存在、役割は果てしなく大きい。
みんなで守っていきたいものだ。
(82、茨城県水戸市在住)