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「キルチャビ」4/関係者たちの思い

2024年07月14日 01:11 文化

「継承」する決意をステージに

「キルチャビ」公演の出演者と関係者たち

観覧者と出演者をはじめとする約1千人で大盛況を博した「舞LOVEウリ学校チャリティ芸術公演『キルチャビ(道しるべ)』4」(7日、倉敷市芸文館)。岡山同胞たちが築き上げてきた歴史を胸に刻み、新世代同胞たちと共に進む輝かしい未来への「道しるべ」が示された。舞台上では、各世代の思いや決意が美しく、逞しく表現された。

子どもに背中押され

第1部で披露された、朝青員たちによる舞踊「太鼓の舞」

7年ぶり、4回目の開催となった今回の 「キルチャビ」公演。出演者たちは公演の開催が決まった昨年の7月から、公演を大成功させる一心で練習や準備に取り組んできた。

これまで、「キルチャビ」を3回に渡り企画し、公演の収益から学校への財政的な支援を行ってきた実行委員会をはじめ、岡山の同胞たちが力を尽くしてきた。

2013年の第1回公演に向けて、12年に、岡山初中に子どもを送る母親たちを主に結成された舞踊サークル「ヒャン」。副主将を務める崔優実さん(48)は公演を終えて、「これまでとは違った景色が見えた。あれだけの人で客席が埋まるとは…」と声を漏らす。崔さんによると、「ヒャン」は結成から13年目を迎えた現在も、メンバーが誰一人欠けていないという。崔さんは「膨大なスケジュールでとにかく大変だった。練習では昔のように身体が動かず、山あり谷ありの日々だった。メンバーは皆、子どもたちの母校であるハッキョを守りたい一心で頑張った」と話す。公演を振り返り、「どの演目もクオリティが高く、出演側の人間でありながら鳥肌が立った。次世代へと繋ぐ、これからの『道しるべ』が示された舞台だったと思う」と語った。

7年ぶりに「キルチャビ」公演が開催されることとなったきっかけは、岡山初中の子どもたちの「熱烈な希望」だった。

孫圭花さん(44、ヒャン)は、「昔の公演DVDを観た娘が、『オンマとキルチャビに出たいと言ってきた。公演はチャリティーだからお金も集めなければならないと説明したら、娘が自分の貯金からお金を出すと言って…」と当時を振り返る。

子どもたちの夢を叶えるために、実行委を筆頭に「ヒャン」、朝青舞踊部、岡山の同胞たちが立ち上がり、今回の公演を見事に成し遂げた。孫さんは、「久しぶりの練習に年齢的な衰えを感じる中で、公演のために真剣に練習する娘や子どもたちの姿に背中を押された。娘たちをとにかく褒めてあげたい」とし、「朝青員たちも意気込みや自覚が強いから、今後は何をするにも応援してあげたい」と語った。

岡山初中の子どもたちも舞台で演目を披露した

申景淑さん(46、ヒャン)は、「自分たちや子どもたちのための衣装や装飾、小道具をすべて手作りで準備するのはやっぱり大変だった」と語る。申さんによると、あるメンバーは3カ月をかけて大きな小道具を家で完成させてきたという。「練習の時にはメンバー全員で励まし合い、誰もが真剣に取り組んでいた」と準備期間を振り返る申さんは「結婚を期に岡山に来たけれど、親が我が子を思う力が強く、本当に熱い地域だ」とし、一方で「子どもたちも岡山ハッキョが本当に好きだし、今回の公演では、子どもたちの成長を大きく感じた」と話した。

事務局長を務めた金華淑さん(49)は、「実行委員長を中心に、岡山同胞たちの深い情と、圧倒的な行動力、日本各地の朝鮮学校や団体からの協力があったからこそ開催できた」と笑顔で語る。金さんは、「1、2世同胞からのバトンを受け継いでいく意思を表すことができた」としつつ、「難しい現実もある中で、岡山での民族教育史に新たな足跡を残すことができた。そして大切なのは、この公演に込めた思いを行動に移し、次につなげることだ」と前を見据えた。

「キルチャビ」実行委員会の委員長は、「出演者の気持ちが一つになって、努力と汗と喜びと涙の集大成だった。言葉より家族の姿を見て育ってきた子どもたちの成長を感じた」と話す。また、「来年に岡山初中創立80周年を迎えるが、10年先も100年先も同胞社会が続いて行けるように、微力ながらも貢献していきたい」と語った。

新世代が継承を

出演者たちに声援を送る観覧者たち

この日の公演では、朝青員たちも舞台上にあがり、活気溢れるパフォーマンスで会場を盛り上げた。歴代の「キルチャビ」公演で、最も多くの朝青員が出演した今回の公演について、関係者たちは「朝青員たちのたくましさに驚いた」と口をそろえた。

第1部の新世代演奏「キルチャビアリラン」で歌を披露した崔崇錬さん(24)は、「1部の最後に朝青の演目を組み込んでくれて、朝青への期待を感じた。その期待に応えたいという思いで取り組んできた。今回の公演を通じて、これまで同胞たちから受けた恩を返したかった」と話す。公演の曲中、同世代の同胞たちと共に先代の思いを継承する意志を声高らかに叫んだ崔さんは、「学校や同胞たちのためにできることを最大限やっていきたい」と決意を語った。

公演練習のために、9カ月に渡り、毎週のように広島県から岡山の練習場に通い続けた朝青舞踊部の李仙希さん(26)は、「最初は公演に出るかどうか迷った。仕事をしながら練習を続けることは決して簡単ではなかった」と語る。それでも李さんは、公演を終えて、「後輩たちのために一つでも良いものを残したいという気持ちで頑張ってきた。出演を決心して本当に良かった」と涙を流しながら話した。「ウリハッキョは各世代を繋ぎ、同胞たちの情が交わる、温かくて大切な場所だと再確認した。公演を通じて、世代を受け継いでいく一員としての自覚が強まった」(李さん)

2世同胞を中心に構成される「イオ」が合唱を披露した

2世同胞を中心に構成された「イオ」の一員として合唱を披露した林広枝さん(75)は、「下の世代の同胞たちが一生懸命に練習へ取り組む姿を見て、私たちの舞台で公演を台無しにしてしまってはダメだと痛感させられた。本番の出来はこれまでになく良かったし、持てる力を出し切れたと思う」と振り返った。

林さんは、「(次世代に)私たちの意志を受け継いで行って欲しい。1人でも多くの人が、自分の国を愛する気持ちを授けてくれるウリハッキョの良さを知ってくれたら嬉しい」と語った。

 (朴忠信)

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