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〈金剛山歌劇団2024〉キャストが語る見どころ

2024年06月27日 09:32 主要ニュース 文化・歴史

格別な思いで臨む50周年公演

6月11日、金剛山歌劇団の2024年度ツアーが幕開した。今年は、金剛山歌劇団という名を刻み、50周年を迎える記念すべき年。ステージを飾った演目は、祖国そして同胞社会からの愛を受け歩んできた歌劇団の道のりを物語るように、同胞たちに愛される祖国の名作やオリジナル作品で華麗に彩られた。本公演に格別な思いで臨むキャストたちにツアーの見どころを語ってもらった。(文・韓賢珠、朴忠信、写真・盧琴順)

傍にはいつも「祖国と同胞」

舞踊手・朴康夫さん

朴康夫さんが出演する舞踊「朝鮮相撲」

今年の公演で披露されるのは12の演目。そのうち、6つが舞踊作品で構成された。

歌劇団舞踊部の部長を務める朴康夫さん(37、06年入団・愛知中高卒)によると、プログラムの第1部には、昔から愛されてきた歌劇団の有名な舞踊作品「山河を舞う」(按舞=功勲芸術家ペク・ウンス)、「あの空の向こうへ」(按舞=人民芸術家ペク・ファニョン)が、第2部には、代表作である「月灯かりの下で」(按舞=ペク・ファニョン)をはじめ、「チャンゴの舞」(按舞=ペク・ウンス)など比較的新しい作品が組み込まれたという。さらにフィナーレの民俗舞踊「農楽舞2024」では、女性舞踊手がサンモ(一般的に農楽舞で男性舞踊手が被り回す帽子のこと)を回すシーンもあり、これまでにない新しい舞踊作品たちが準備された。

今公演について、「歌劇団の歴史と未来」がテーマになっていると語る朴さん。自身が出演する舞踊「朝鮮相撲」は「他の演目にはない、コミカルな動きが魅力」だと朴さんはいう。古くから朝鮮で親しまれてきた民俗遊び・朝鮮相撲をとる男性の様子を表現した同作は、2013年に誕生して以来、公演を観に来た同胞たちや日本人の心を掴んできた人気作。舞台の終わりには、ある驚きの仕掛けも明かされる。子どもから大人まで楽しむことのできる必見のステージだ。

朴さんは、「チャンダン(長短)のリズムに合わせて踊る作品から、旋律やバレエのような要素を取り入れた現代的な作品まで、今年の公演を通じて多様な舞踊作品を楽しみ、祖国の香りや歌劇団の歴史を感じ取ってもらえたら」と強調する。

「この50年間、歌劇団の傍にはいつも祖国があり、先代同胞たちの存在があった。その感謝の気持ちを舞台で伝えたい。これからの新たな50年を、私たち団員がどのような覚悟で歩むのか、舞台で示すことができたら」(朴さん)。

 

祖国が記憶し同胞に愛されるよう

歌手・文龍大さん

50周年公演で歌を披露する文龍大さん

民族教育への熱い思いが込められた歌謡曲「ウリハッキョ、ウリ未来」。本公演では、この作品が、混声重唱で披露される。男女2人がメインボーカルを務める同演目で、男声メインボーカルに抜擢されたのは、入団6年目を迎えた歌手・文龍大さん(24)だ。

引き込まれるような優しい表情に、伸びのある歌声で、歌詞を噛みしめて歌う姿が印象的な文さん。歌劇団50周年の記念ステージで、自身に「祖国とは何かを教えてくれた」民族教育がテーマの唯一の曲を歌うことへの「責任」を感じながら舞台に立っている。

「観客たちの中には、いままさに学校を守っている同胞たちや、それを支援する日本の方々など各地の学校を支えている人たちが少なくない。そんな方々が、ウリハッキョのために活動してきてよかった、そう思えるステージを届けたい。そして民族教育を知らない人たちに向けても、こんなにも素晴らしい居場所があるんだと伝えたい」(文さん)

大阪朝鮮歌舞団の声楽手として名を馳せた母親の影響から、いつしか朝鮮の歌が好きになったという文さん。大阪朝高(当時)へ進学後は声楽部に入部し、祖国での通信教育も受けた。それを機に「歌の力で同胞社会に貢献したい」と歌手の道を志した。かつては自身の境遇にプレッシャーを感じることもあったが、今では最も身近な助言者が母・康順愛さんだという。「悩んだときにアドバイスをくれたり、課題の原因を共に探してくれたおかげで解決したことがたくさんあった」。

近年、歌劇団の歌手層は20代、30代を中心とするメンバーへと大きく若返った。文さんは、「歌劇団の顔」として活躍してきた先代たちから引き継いだバトンの重みを感じながらも「自分たちだからこそできる表現や歌声」で、歌劇団の歴史を刻んでいきたいと決意している。

文さんはいう。「祖国そして首領の愛を受け発展してきた金剛山歌劇団の記念すべき50周年ステージに立てることへの喜びとやりがいを抱きながら、各地の同胞たちに芸術を通じて祖国のすばらしさ、民族教育のすばらしさを伝えたい。いつか自分も先代たちのように祖国が記憶し、同胞たちから愛される歌手になりたい」。

 

民族楽器奏者としての責任感

ソヘグム奏者・金仙芽さん

オーケストラピットでソヘグムを演奏する金仙芽さん

「ここ数年は、コロナの影響で観客との距離が近くなるオーケストラピットには降りれない状況もあり舞台上で演奏していたが、今年は久しぶりに舞台下で演奏する」。

ソヘグム奏者の金仙芽さん(27、18年入団・朝大教育学部音楽科卒)はそう言いながら、全演目で民族管弦楽団が生演奏する今公演の見どころを「奏者たちの楽器の音色に注目してほしい」と話した。

オーケストラピットといえば、華やかな舞台上とは対照的な舞台下に設置され、照明もあまり当たらない。黒を基調とする衣装を着た奏者たちは、目立たず、一見裏方のような存在にもみえる。けれど作品には登場人物それぞれに役があるように、「いかに良い音色で作品全体の完成度をあげるのか」が、楽団メンバーらに課された大事な役目だと、金さんは語る。「演奏そのもののクオリティを追求し、舞踊手と声楽手たちが舞台上で輝きを増すような演奏を届けたい」。

一方で今回、舞台上でやる唯一の器楽演目・チャンセナプ独奏「われら幸せを歌う」(出演=功勲俳優・崔栄徳)は50周年を記念する今公演用に、チャンセナプ独奏曲として新たに編曲(=孫東勲)された。この新作に花を添えるオケピでの演奏は「光栄でしかない」と語った金さん。京都第3初級(当時)2年生の頃からソヘグムをはじめ、「自分の好きなことを活かし活躍したい」との思いを原動力に、プロ奏者としての道を歩んできた。そして入団7年目のいまは「民族楽器の奏者としての責任感」が団員としてのモチベーションになっているという。

「民族楽器の担い手は、例えば講師が比較的多い舞踊や、外部にも専門家が多い吹奏楽に比べると少ない。だからなおさら、ウリハッキョの子どもたちの見本にならなくてはとの思いがある」(金さん)

金さんは「50周年という節目に、歌劇団団員として公演を上げられる喜びをかみしめながら、また朝鮮芸術の一部である民族楽器を奏でられることへの感謝の思いを胸に、一つひとつの公演に臨みたい」と、今ツアーの完走に向けて決意を新たにした。

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