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〈ものがたりの中の女性たち78〉「何故人の夫を盗むの」―宋氏の妻某

2024年04月08日 09:00 寄稿

あらすじ

聞慶(ムンギョン)峠にある一軒家に宋氏という若い男が、美しい妻と住んでいる。宋氏は科挙に合格できず荒んだ日々を過ごす。朝帰りに、何日も家を空けることも珍しくなく、都落ちしたときに持ってきた財産はすでに使い果たし、家計は苦しくなる一方。妻は涙に暮れ夫の帰宅を待つが、酒に酔った夫は徐々に暴力を振るうようになり、妓房に入り浸る。遂には狐が家に入り込み、夜ごと家中を荒らしまわる。ある日、夫の友人が約束をしたと訪ねてくる。

桃の木で造った退魔剣

すでに夕飯時、客に膳を届けた後、妻は台所で使用人と夕飯を取るが、狐の騒動のせいで器に夫の催淫剤が紛れていたことを知らず食べてしまう。夜更けに妻は、客間の戸を無言で叩く。その意味を察した夫の友人は、友情を裏切ることはできないと強い口調で断る。夫の薬を口にしてしまったことに気づいた妻は、冷水を一杯飲み干すと落ち着きを取り戻し、恥ずかしさの余り首を吊ってしまう。発見が早く一命をとりとめたが、客は夜のうちに帰る。

昼、帰宅した宋氏は事と次第を妻から聞き、自分の行いを激しく後悔、生活を一変させる。その日から狐も姿を現すことがなくなり、ふたりは仲睦まじく暮らす。ところが妻は病であっけなく亡くなる。苦労ばかりさせ、妻の若く美しい時を浪費させた罪悪感に、宋氏は呆然とし毎日泣き暮らす。すると、天帝に許しを得た妻は、あの世から帰ってくる。一年ほど妻の幽霊と暮らし再婚する気も起こらなかったが、周りから勧められるがまま、夫は若く美しい女に目がくらみ再婚するが…

第七十八話 退魔の樹

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