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〈パリ五輪アジア最終予選〉不屈の闘志を発揮、同胞たちに大きな力と感動/朝鮮女子、1‐2で惜敗

2024年02月29日 08:30 スポーツ

朝鮮選手らは3千人の同胞応援団の声援を背に、最後まで諦めずにゴールに向かってひた走った(写真はすべて盧琴順撮影)

サッカー朝鮮女子代表は28日、国立競技場でパリオリンピック2024女子サッカーアジア最終予選第2戦で日本と戦い、1‐2で惜敗した。五輪出場権は逃したものの、朝鮮選手らは3千人の同胞応援団の声援を背に、最後まで諦めずにゴールに向かってひた走る姿を見せ、同胞たちに大きな力と感動を与えてくれた。

応援背に、もぎとった1点

朝鮮選手たちがエスコートキッズを務める朝鮮学校の児童たちと共に入場した

朝鮮は第1戦(24日)と同じく5バックを採用し、序盤から激しいプレッシャーをかけ、日本のボール保持者に対して体を寄せた。球際では闘志みなぎるプレーでボールを奪取。豊富な運動量で日本のパスワークに対応。攻撃においては、ペナルティエリア外からも積極的にシュートを放ち、ゴールを狙った。

前半10分からは日本がボールを支配し、朝鮮にとっては苦しい時間帯が続くも、日本のFWに入る縦パスに対してしっかりとプレスをかけて、プレッシャーを与えた。

同20分には左サイドから12番のチェ・グモク選手がドリブルでペナルティエリアに侵入し、チャンスを演出。朝鮮の選手たちは、足元の細かいプレーにおいて技術力の高さを見せつけた。

しかし25分には、フリーキックから失点を許し、1点を追う展開に。積極的に相手ディフェンスの裏を狙い、攻勢に出る朝鮮。44分には、12番のチェ・グモク選手がゴール前で技ありのヒールシュートでゴールを狙うも、相手GKの好セーブに阻まれる。

朝鮮の選手たちは最後まで諦めず、勝利を目指して猛攻を仕掛けた

後半開始早々、朝鮮は猛攻を仕掛け、ゴール前にボールを集める。朝鮮の猛攻に、赤く染まった同胞応援団の声援は一段と熱を帯びた。

一方、ディフェンスでは前半よりギアを上げて、鋭いプレスを仕掛ける。またルーズボールやセカンドボールに対しては出足を早めてボール保持を狙っていった。

後半20分には、6番のミョン・ユジョン選手、17番のキム・キョンヨン選手、22番のキム・ヘヨン選手の3人を投入。フレッシュな選手たちに局面の打開を託した。

攻守が一転二転と切り替わる激しい攻防のなか、同31分に、痛恨の2点目を許し絶体絶命。しかし、朝鮮の選手たちは最後まで諦めなかった。36分には、10番のリ・ハク選手の絶妙なスルーパスから、22番のキム・ヘヨン選手の技ありのシュートで1点をもぎとる。同胞応援団の大声援を後押しに、選手たちは同点を目指して、波状攻撃で何度も日本のゴール前に迫るが、無情にも試合終了のホイッスル。朝鮮は1-2で敗れ、惜しくも五輪出場権を逃した。

ゴールを目指す選手たちの闘志は、同胞たちに大きな感動と力を与えた

相手がボールを保持しても執念で食らいつき、ゴールを目指す選手たちの闘志は、同胞たちに大きな感動と力を与えた。試合終了後、朝鮮選手たちは同胞応援団が位置するエリアに駆け寄り、深々と一礼し、熱い声援に感謝を表した。

朝鮮代表のリ・ユイル監督は試合終了後の記者会見の冒頭で試合について、「両チームとも全力を尽くして、素晴らしい姿を見せてくれた。勝利を収めることができず残念だが、今日の試合を通じて、朝鮮と日本のサッカーが今後さらに発展するきっかけになる」と述べた。

また本紙記者が、応援に訪れた3千余人の同胞応援団と、各地の同胞たちからの声援を受けて、同胞たちへのメッセージを求めると、リ監督は涙で声を詰まらせながらも、「(日頃から)遠く離れた日本で私たちを支え、応援してくれる同胞たちにいい結果をもたらすことができず申し訳ない。さらに努力して同胞たちに良いプレー、試合を届けたい」と言葉を絞り出した。

一方、日本代表の池田太監督は、朝鮮代表の組織力と選手の実力、朝鮮サポーターに対する本紙記者の質問に対して、朝鮮の選手たちは「技術力、ボールに向かう推進力など個人の能力が高く、難しい試合になると思っていた。2試合とも(球際)の強さ、組織力が出ていた」と評価しながら、試合終了後には同胞応援団から「『五輪で頑張れ』という声もいただいた。サッカーを愛する仲間として、スタジアムに来てくださったことはうれしく思う」と話した。

観客席では、関東地方の朝鮮学校の生徒や学生、同胞を中心とした3千400人規模の同胞応援団が朝鮮選手たちに熱い声援を送った

この日、観客席では、関東地方の朝鮮学校の生徒や学生、同胞を中心とした3千400人規模の同胞応援団が朝鮮選手たちに熱い声援を送った。 観客席の一角を赤色で埋めた同胞応援団は、愛国歌の演奏時に特大の朝鮮国旗を応援席の最前列で掲げ、試合中には赤いバルーンスティックや太鼓に打ち鳴らしながら「必勝朝鮮」「頑張れ朝鮮」などのかけ声や「社会主義前進歌」「攻撃戦だ」などの力強い歌で選手たちを鼓舞した。試合中、同胞応援団の声援は途切れることなく会場に響き渡った。

長野からは朝鮮代表の勇姿を目に焼き付けようと、同胞や長野初中の児童ら30人以上がバス2台に分乗し会場に駆けつけた。

試合後、「本当に惜しかった」と悔しさを滲ませた田成愛さんと趙玉蘭さんは、試合中にチャントを統率する応援団の呼びかけに大声援で応えていた。「最後まで選手たちの背中を押すつもりで応援した」と田さん。一方で趙さんは、2017年のEAFF E-1サッカー選手権で行われた朝鮮代表の試合を観た娘から、試合を観て胸が高鳴る思いをしたと聞いた。今回の試合には「必ず行きたい」というその娘を会場に連れてきた。

「子どもたちにとって祖国を身近に感じる貴重な機会。我が子だけでなくウリハッキョの子どもたち、長野の同胞たち皆が最高に楽しんでいた。朝鮮代表の闘志を心から称えたい」(趙さん)

2017年のEAFF E-1サッカー選手権を観戦したという朝青西東京・南部支部の金柊基さん(19)は、「7年前に朝鮮サッカー代表を応援したあの時のように祖国の選手にエールを送りたくて競技場に駆けつけた」とし、「まだ祖国に一度も行ったことがないので、いつかウリナラに行きたいという気持ちで、朝青活動に励んでいる。そんな自身の気持ちを応援にぶつけた」と話した。

試合中、同胞応援団の声援は途切れることなく会場に響き渡った

茨城初中高の尹志友さん(高3)は「朝鮮のゴール時には応援席の歓声がものすごく、自然と胸が高鳴り興奮した」と振り返りながら、「試合には負けてしまったが、最後まで諦めずに戦う姿にたくさんの力を得た」と語った。

同胞応援団が陣取るアウェー席に座った丸井さん(32)は試合前、朝鮮チームに対して「圧力のかかった攻撃が楽しみ。序盤から猛攻でやってほしい」と期待感を抱いていた。過去に3度の訪朝経験がある丸井さんは、牡丹峰楽団や三池淵管弦楽団など朝鮮の音楽文化に興味を持ったことを機に朝鮮ウォッチャーになったという。大応援団と共に声を大にして朝鮮代表を応援したいと述べながら「後悔しないように堂々と戦って欲しい」と朝鮮チームへの声援を送っていた。

慶應義塾大学大学院に通う上野遼さん(25)も朝鮮の文化に関心を持つ友人らと共にアウェー席の一角で試合を観戦した。上野さんは「日朝戦を日本で観戦できることはあまりないので、貴重な機会に是非とも朝鮮チームの姿を近くで目に焼き付けたかった」としながら、「素晴らしい応援を見せる在日コリアンの方々の姿にも多くの人たちが関心を持ち、感銘を受けたはずだ。このような機会を通じて朝鮮や在日コリアンに対する理解が広がってくれれば嬉しい」と語った。

(取材班)

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