〈まるわかり! 法律で知る朝鮮7〉住宅法から見る朝鮮社会の実情/李泰一
2024年02月10日 06:00 寄稿法制定の背景、内容と特徴
■はじめに
朝鮮の住宅法は、2009年に制定され、以降7回にわたって修正・補足されている。とりわけ金正恩時代(12年〜)に入ってからは5回修正・補足(12、14、16、20、21年)された。修正・補足が頻繁に行われたのは、朝鮮が抱える住宅事情の「困難さ」の反映であり、またこの難問を必ず解決するという国家意思の表れでもある。
朝鮮において住宅は、私的所有に基づく単なる個人資産ではなく、国家によって人民たちに保障されるべき生存権である。したがって、朝鮮において住宅を利用する権利は、譲渡可能な債権ではなく、すべての人々に平等に保障される生存権であり、国家によって付与されて然るべき公民権である。そのような意味で、朝鮮の住宅法は民法のような私法ではなく、社会主義住宅政策の法化として理解されるべきである。
■住宅建設が最重視される政策的理由
今なぜ、朝鮮において住宅建設が最重視されているのか。
金正恩総書記が、平壌市5万世帯建設プロジェクト(2021~25年)の1年目の課題だった松新・松花地区の1万世帯住宅の着工式(21年3月)で行った演説にその意図が示されている。総書記は演説の中で、5万世帯の近代的な住宅を建設することは、平壌市民にいっそう安定した文化的な生活条件を提供するために朝鮮労働党が大胆に構想し、準備してきた宿願事業であり、何らかの経済的利益のためのものではなく、徹頭徹尾、国家の財産と勤労者大衆の創造的労働の結果がそのまま勤労者自身の福利となるようにするための崇高な事業であると述べている。まさに人民大衆第一主義を実現する焦点的課題が住宅問題だ。
この問題意識はすでに、党第8回大会(21年1月)の報告において提示されている。