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朝・日学生らがスタディツアー/留学同大阪が主催

2024年01月24日 13:30 暮らし・活動

加害の痕跡、私たちの街にも

「大学・専門学生スタディツアーin大阪市」が1月13日〜14日にかけて行われた。

在日本朝鮮留学生同盟大阪地方本部(以下、留学同大阪)が主催する「大学・専門学生スタディツアーin大阪市」が1月13日〜14日にかけて行われた。日本の大学および専門学校に通う学生たちを対象とした同イベントに、在日朝鮮人学生と日本人学生、活動家ら13人が参加した。

本スタディツアーは第一に、自分たちの住む街(大阪市)に朝鮮人強制連行にまつわる跡地や追悼碑があることを認識し、未だ清算されていない日本の植民地支配とそれに連なる歴史について考え学ぶ機会とすること、第二に、朝鮮学校や「出入国管理及び難民認定法」改悪に関する学習を通じて、在日外国人に対する差別的な政策や社会の現状を確認し、過去の歴史と現在がどのように繋がっているのかを認識することを目的に企画された。

忘却につながる無知

初日には大阪中高を訪問し、授業などを見学した

初日目の午前、一行は大阪中高へ赴き、授業の様子や図書室などを見学した。

この日、初めて朝鮮学校を訪れた日本人の大学生は、教員による一方的な注入式ではない、生徒らと共に作り上げる授業を目の当たりにして、「教員と生徒らの間の精神的な距離が近く自分も共に学びたいと感じた」と感想を述べた。

午後は空野佳弘さん(大阪府朝鮮人強制連行真相調査団日本人側事務局長、弁護士)を講師として迎えフィールドワークを行った。一行は大阪城天守閣付近に集合し、堀の上へ登って空野さんの説明を受けた。

説明によると、公園の東側にある森ノ宮駅から京橋駅付近一帯は、かつて面積1.18平方キロもあった大阪陸軍造兵廠(大阪砲兵工廠)で、戦争末期には1,300人以上の朝鮮人が植民地支配の下で強制的に徴用させられたという。日本が敗戦を迎える前日、1945年8月14日に大阪造兵廠は米軍B29爆撃機の餌食となり廃墟と化した。

空野佳弘さん(大阪府朝鮮人強制連行真相調査団日本人側事務局長、弁護士)を講師に迎えフィールドワークを行った。

日米間の戦争に巻き込まれ、祖国へ帰ることも叶わずに命を奪われた朝鮮人たちのハン(恨)はいかほどだっただろうか―。大阪城公園を後にし、一行は谷町九丁目駅南西にある生玉公園へと向かった。公園の真下には地下壕があり不自然な丘を形成している。

戦争末期、日本軍が空襲に備えるための「都市防空壕」として機能していた場所だという。都心に埋もれていたこの軍事地下壕を発見したのは、建設に従事した朝鮮人1世で、かれの証言によって1991年に明らかになった。

講師の空野さんと共に記念撮影した

空野さんは、行政との交渉の結果、地下壕の開封を推し進めた当時の大阪府朝鮮人強制連行真相調査団の活動を振り返り、「日本社会がより良くなるためには朝鮮人が虐げられた歴史を決して忘却してはならない」と語られた。

空野さんと別れ、一行はフィールドワークの最終地、統国寺に向かった。

統国寺の崔無碍住職による説話

本堂に学生たちを招いた、統国寺の崔無碍住職は、冒頭、「歴史を知らないということは、その人にとっての歴史がないことを意味する」と説き、朝鮮半島の分断の歴史や百済からの渡来人が深く関係している統国寺の歴史を語った。学生たちは食い入るように住職の説話を聞いていた。

本堂のすぐそばには済州4・3犠牲者の慰霊碑があり、そこには済州島各地の石が並べられている。この日、済州島を故郷に持つ学生たちが、祖先の生まれ育った土地の石を懸命に探している様子はとても感慨深く、強く印象に残る場面であった。

実は矛盾に満ちている

小堀百花さんによる講義「入管問題とはなにか」

2日目の午前は、旧・大阪第4初級の一室を借りて、小堀百花さんによる講義「入管問題とはなにか」を行った。TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)で活動する小堀さんは、出入国在留管理庁の概要と収容や仮放免など問題が山積する入管の実態について解説。これらの問題は「大日本帝国の侵略思想が清算されていないことに起因する」と強調した。また同氏は、外国人「排除」と「保護」の矛盾した性格を持つ入管制度見直しの必要性と、「出入国管理及び難民認定法」の改悪に対し、改めて抗議の意を強く表明した。

学生たちは講義を通じて、在日朝鮮人をはじめとする外国人への官民一体となった差別に抵抗し、連帯する重要性を実感していた。

午後には運動場で七輪を囲い、焼肉を頬張りながら楽しいひとときを過ごした。

運動場で七輪を囲い、楽しいひとときを過ごした学生たち

船田菜月さん(天理大学2年)は、「私と年齢があまり変わらない若い人たちが、在日朝鮮人に関する問題に真剣に向き合い活動に取り組んでいて、すごく感心した。私は朝鮮人ではないが一緒に問題について考えていきたいと強く感じた」と語った。

留学同大阪の趙錫隆さん(大阪経済法科大学4年)は、「いつもなら通り過ぎるような場所に、強制連行に関する銘板が設置されていることを今回初めて知った。一度学んだ内容でも忘れていたり、説明できなかったり、改めて自分の知識の浅さを認識した」と述べ、「当たり前だと思っていることが実は矛盾に満ちているという意識を持って、これからも学んでいきたい」と意気込んだ。

【留学同大阪】

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