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群馬の朝鮮人追悼碑撤去問題/存続訴え市民団体が集会

2024年01月22日 16:03 歴史

県立公園「群馬の森」にたたずむ「記憶 反省 そして友好」の追悼碑(1月20日撮影)

県立公園「群馬の森」(群馬県高崎市)に位置する朝鮮人追悼碑の存続危機を受けて20日、「記憶 反省 そして友好」の追悼碑を守る会(以下、守る会)が群馬県教育会館(前橋市)で県民集会を開いた。県内外の同胞や日本市民ら約250人が参加し、何としても碑を守り抜くという強い意思を示した。

集会には約250人が参加した

”歴史の書き換えを許すな”

群馬の朝鮮人強制連行犠牲者追悼碑をめぐる状況は現在、極めて緊迫している。

2004年に建立された碑は、12年に碑の前で行われた追悼式で「強制連行」という「政治的な発言」がなされたとして、「碑文が反日的」だと主張する排外主義団体の抗議が県に相次いだ。その後、守る会の碑の設置期間更新許可申請を14年に県が不許可処分したことを受け、同年11月、守る会は県を相手取り前橋地裁に提訴。18年の1審判決では県の対応が「裁量権の逸脱」だと認められて守る会側が勝訴したものの、東京高裁では一転敗訴。22年6月に最高裁で上告が棄却され、高裁判決が確定した。

守る会が昨年10月11日、追悼碑の存続をかけて新たな裁判闘争(前橋地裁に提訴)を始めた。その後、10月25日付で県が守る会に対して12月28日までの碑の撤去を求める「戒告書」を送付。それに対して守る会は今年1月5日、通知の内容に則り、「戒告書」に対する取消し訴訟の提起と代執行の執行停止の申立てを行った。しかし、1月19日付の地元紙の報道により、県が追悼碑撤去の方針を固めたことが明らかになった。

集会のあいさつで、守る会の川口正昭共同代表は、現状を受け対応を急がねばならないという危機感を共有。そのうえで、「追悼碑を守る闘いは、公権力による歴史の書き換えを認めるか否かを問うことでもある」と強調し、追悼碑存続のために共に行動することを呼びかけた。

川口正昭共同代表

続いて、藤井保仁事務局長は、守る会と弁護団が24日の合同会議で碑の存続をかけた最終的な方針を固めると報告。また藤井さんは、「強制連行という歴史的事実は、歴史学者や当事者の証言で明らかになっている。政府見解ではないからと、その言葉を使用したことが(碑の前で『政治的な集会』を行わないという)約束に違反したと主張することは、撤去のための言いがかりに過ぎない」と県側が示しているの撤去ありきの姿勢をただした。そして、「たとえ県が碑を撤去しようとしても、県内の朝鮮人強制労働の現場を調査、記録し後世に教訓として残そうとした先達の思いを押しつぶすことはできない」とし、その思いを継承していくことを誓った。

昨年10月11日に新たに提起した訴訟の第1回弁論が2月7日に行われる。谷田良弁護士の報告によると弁護団では、裁判期間に碑が撤去されないよう、10月の提訴時に県が示した碑の撤去および原状回復命令の効力を停止するための申立てを訴状と共に裁判所に提出し、1月5日にも同様の申し立てをしているため、いまは裁判所にその判断を急ぐよう促している。

集会では、藤井正希・群馬大学社会情報学部准教授が「検証・群馬の朝鮮人追悼碑裁判~歴史修正主義とは?~」と題し講演を行った。

藤井正希准教授

藤井准教授は、「村山談話と日朝平壌宣言などに沿った碑文の内容を『反日的』と言い、撤去を求めることはまったくの筋違いだ」と排外主義団体の主張とそれを追認する県行政を一蹴。「県の対応はまさに歴史修正主義に手を貸す暴挙ではないか」と指弾した。

県庁前で撤去反対の声を上げる市民たち

参加者らは集会後、県庁前に移動し「朝鮮人追悼碑を撤去するな」などのシュプレヒコールを叫んだ。

碑が建立された当初から関わり、東京で裁判も傍聴した女性同盟群馬・中北支部委員長の金正愛さん(63)は、「私たちの歴史を伝える教養としての碑が撤去される影響はきわめて大きい。碑を守るためにも、より多くの同胞たちに知らせていかなければ」としながら、「連帯する日本の方たちと共にさらに心を強く持って頑張りたい」と言葉に力を込めた。

(康哲誠)

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