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“朝鮮半島と沖縄の平和は不可分”/沖縄の反戦運動は今(上)

2024年01月18日 08:30 時事

米日南の軍事的結託が強化される中で加速する沖縄の軍事要塞化。敵基地攻撃能力の保有や辺野古新基地建設問題など、日本の軍拡化が浮き彫りになり、これに反対する沖縄の市民らの運動が高揚している。反戦平和を掲げ闘う沖縄の活動家らの思いと活動を現地で聞いた。

フェンス越しに見える嘉手納基地

新基地建設、軍拡を阻止

米軍基地に反対する沖縄・韓国民衆連帯(民衆連帯)の高橋年男理事(70)は、沖縄の戦場化を想定した軍拡の脅威と、それにより地域情勢に軍事的緊張が走っている昨今の事態に警鐘を鳴らす。

普天間飛行場のすぐそばに住む高橋さんは、数十年の間、日々の暮らしの中で騒音や汚染水など米軍基地の被害を受け、沖縄米兵少女暴行事件をはじめとする米兵によるあらゆる犯罪を目の当たりにしてきた。

高橋さんは反戦運動家たちと共に、火、水、木曜に米軍基地の前で米兵の出退勤の時間に合わせてプラカードを掲げ「オスプレイでていけ!」「普天間基地を閉鎖せよ!」と叫びながらデモを行っている。

米日南の軍事的結託が強まっている。写真は昨年5月、釜山の海軍基地に並ぶ米日南豪の艦艇(聯合ニュース)

高橋さんは数十年に及ぶ反戦運動の中で「安保3文書改定(22年12月)以降、日米韓の軍事結託はますます強くなった」と指摘する。

高橋年男さん

特に日本政府が米国製巡航ミサイル「トマホーク」(飛距離1600km)と、他国領域の軍事拠点などを直接攻撃できる国産の長射程ミサイルの配備(25年度)を決定し、その保管先を沖縄に決めたことについて危機感をあらわにする高橋さん。「沖縄は日本の防波堤ではない」と語気を強めた。

また、沖縄と朝鮮半島の関係について「普天間基地や嘉手納基地には国連旗が掲げられている。朝鮮戦争時に米軍が国連の名のもと参戦し、後方支援基地として沖縄の基地を使用したからだ。朝鮮戦争を一刻も早く終結させ、朝鮮半島に平和が訪れない限り、米軍は沖縄に居続ける。沖縄と朝鮮半島は不可分な関係だ」と本質を突く。

1997年4月に発足した民衆連帯は、沖縄と南朝鮮の幅広い市民らが連帯する過程で、「慰安所」が実在した場所など、新たな証言を収集することができたという。

高橋さんは「連帯のきっかけがなかったら、沖縄に『慰安所』があった事実すらなかったことになっていたかもしれない。これまで問題意識を持っている韓国の人たちと連帯してきたが、今後は反基地運動の喫緊の課題である世代交代を乗り越え、連帯のチャンネルを広げていきたい」と話した。

同じく世代交代を今後の運動課題だと語るのは、奄美大島で生まれ、沖縄本島で育った奥間政則さん(58)。20代の頃から数十年間勤めてきた建設業を2015年に休業し、現在は反基地運動に専念している。

奥間政則さんが制作した沖縄県中部の地図。米軍基地が広範囲に広がっている

ハンセン病患者として差別を受けてきた両親の死をきっかけに休業の覚悟を決め、反基地運動に全力を注いできた奥間さんは、基地ゲート前の座り込みに参加する一方で、建設業で培った設計図作りの経験を活かし、米軍基地の地図をまとめた資料を作成して反基地運動の宣伝に活用している。

奥間さんは「米軍は沖縄を占領した敵国だったのに、日本政府は沖縄の米軍基地を看過するどころか容認し、拡充しようとしている。日本は米国の属国だ。そればかりか中国や朝鮮を標的にして、自国の軍事力を拡張させている」と訴える。

そして、「沖縄県民の民意を無視して、辺野古新基地建設の工事が強行されている。最高裁は(昨年9月に)埋め立て変更申請を不承認とする玉城県知事の訴えを退けた。今のうちに動いて早期に阻止しなければ」と切実に語る。

日本政府による辺野古新基地「代執行」をめぐって、政府は新基地建設における軟弱地盤の埋め立て工事に関する代執行訴訟での福岡高裁那覇支部の判決(23年12月)に基づき、埋め立て工事の承認を代執行した。今年1月10日には工事に着手した。

奥間さんは辺野古新基地建設と日本の軍拡に対する抵抗が必要だと語る。

「沖縄でも戦争を経験していない世代、若い世代の中で基地が存在して当たり前という認識が大多数であることは否定できない。特に、基地があるから安全だという考えが少なくない。しかし、基地がある場所から標的になり砲撃されること、基地の存在が周辺地域を脅かしているということを正しく理解しなければならない。反戦、反基地運動にはまだまだ力が足りない。世代間ギャップを克服し、必ず新基地建設を阻止する」(奥間さん)。

(安鈴姫、下に続く)

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