〈関東大震災朝鮮人虐殺100年〉栃木で偲ぶ会
2023年10月04日 15:16 歴史歴史を風化させないために

大島さんを偲び焼香する参加者
関東大震災朝鮮人虐殺から100年に際して9月3日、栃木の常光寺墓地で、朝鮮人を身を挺して守った大島貞子さんを偲ぶ会が総聯栃木県本部と日朝友好栃木県民の会の共催で行われた。朝・日の連帯をさらに強化していくための集いに県本部の李在哲委員長や栃木初中の教員はじめとする同胞と、日朝友好県民の会をはじめ日本市民ら20余人が参加した。
栃木県では1923年9月2日の時点で流言が各所で広がりをみせた。それを後押ししたのが政府や警察による「不逞鮮人」に対する警戒だった。そして、県の各地で自警団が組織され、朝鮮人に対する集団暴行が行われた。東北本線間々田駅では3日、警戒中の自警団員が列車の中にいた朝鮮人2人を引きずり降ろし、構内広場にて竹槍や日本刀、丸太などで虐殺した。虐殺は同様に石橋駅、小金井駅、東那須野駅(現在の那須塩原駅)でも起きた。
そんななか、「小山市史」には当時小山駅で暴行されていた朝鮮人を身を挺して守った日本人女性のキリスト教徒が紹介されている。
この日の行事はその女性である大島貞子さんの墓前で行われた。

それぞれが思いを胸に刻んだ
始めに、日朝友好県民の会と総聯栃木県本部の代表があいさつを行った。
日朝友好県民の会の渡辺公一事務局長は、関東大震災直後の混乱した時に流言飛語が飛び交い「戒厳令」が下される中、軍隊、警察、自警団らによって他民族への大量虐殺が行われたとし、「朝鮮高校を無償化の対象から外すという差別的な暴挙が行われ、100年の歳月を経ても、排外主義、差別主義が払拭されていない。市民レベルで引き続き朝鮮と日本の友好の取り組みを進めていきたい」と誓った。
李在哲委員長は、身を挺して同胞を守った大島貞子さんへの敬意と謝意を表した。そのうえで、県下において朝鮮人8人が自警団によって虐殺されたことに触れ、「日本政府は、今まで一貫して朝鮮人虐殺の責任を認めず、放置したまま100年が過ぎようとしてる。過去の過ちを認め、反省することによってのみ未来は開かれるものだと信じている」とし、100年を刻む今日を栃木において朝・日の連帯を深めるきっかけにしようと語った。

朝・日の参加者たちは会を通して連帯を深めた
参加者たちは大島さんを偲んで焼香を行い、それぞれが歴史を風化させないことを心に誓った。
大島貞子さんの遠い親戚にあたる大嶋寛さん(73)は「集いに参加して先祖の誇りを実感した。現在、虐殺の歴史否定の流れがあるなかで事実を後世に伝えていかなければならない」と話した。
那須塩原駅近くの共同墓地には、1923年9月5日に当時の東那須野駅で虐殺された朝鮮人とその同伴者とみられる日本人を追悼した碑が建てられている。今春に追悼碑を訪れた朝青栃木県本部の文炯駿委員長(34)は、「栃木での朝鮮人虐殺の実態についてこれまで明らかになった情報をまとめて、それを風化させないための活動を組織的に、さらに推進していかなければならない」と意気込んだ。
(康哲誠)