“子どもたちのために”/中四国・九州地方初級部サッカー大会「朝銀カップ2023」
2023年09月27日 18:05 スポーツ継承と発展の半世紀
9月17~18日にかけて、「朝銀カップ2023 第50回在日朝鮮初級部学生中四国・九州地方サッカー大会」(主催=同実行委)が行われた。中四国・九州地方の朝鮮学校間で、各校サッカー部の強化、発展を目指し、1974年から開催されてきた同大会。岡山県で開催された今大会には、600人以上の同胞が参加した。
大会には毎年、中四国・九州地方にある朝鮮学校6校(広島初中高、山口初中、岡山初中、四国初中、九州初中高、福岡初級)が参加している。今年は、50回の節目を迎えることもあり、新たに兵庫県内の朝鮮学校4校(神戸初中、西神戸初級、尼崎初中、西播初中)を迎え入れての開催となった。
1日目には、岡山初中でスポーツレクリエーションと焼き肉交流会が行われた。児童たちはスポーツを通じ、汗を流しながら交流を深めた。焼き肉交流会には、県内の同胞らに加え、各校の保護者らも集まり、300人以上が参加した。
2日目の大会は、県内のスポーツ施設で開催された。U12の本選部門、U10の育成部門の2つのリーグで行われた大会で、児童らは日頃の練習の成果を存分に発揮した。本選では初参加の西播初中が、育成では合同チームのムジゲミョヒャンサン(山口、九州、福岡)がそれぞれ優勝した。
新任教師の発案で
大会実行委は、毎年、開催地域の朝鮮学校を中心に構成される。今大会は岡山初中が主管となり、実行委には、岡山初中の秋剛鎬校長をはじめとし、同校のサッカー部後援会、サッカー部、アボジ会・オモニ会など、各組織・団体の代表者が名を連ねた。
同校オモニ会は、焼き肉交流会の肉や、試合当日の食事の準備など、飲食物の準備を主に担当した。オモニ会の李美恵会長(47)は「子どもたちにとって、これだけ多くの同世代の同胞たちが集まる場は、思い出にもなり、とても貴重な経験になる。この大会が50年間、途切れることなく続いてきたことの意義深さを改めて実感した」と話す。李会長は「子どもたちには、サッカーを楽しんで、心身共に健康に育って行ってほしい。同胞たちの愛が詰まった朝鮮学校で、朝鮮人として堂々と生きて欲しい」と語った。
「環境のせいにせず、やれることをやっただけ」。こう語るのは同校サッカー部後援会の会長を務める朴慎虎さん(朝銀本店営業部部長)。大会半年前に発足した実行委の一員となった朴さんは、「何よりもまず、50年間続いてきた中四国・九州大会の重みを知ることから始めた」という。
今年で50回目の歴史的節目を迎えた在日朝鮮初級部学生中四国・九州地方サッカー大会。その第1回大会を開催するきっかけとなったのは、当時、岡山初中と四国初中で教員になったばかりの2人の新任教員の提案だった。チームの強化を図るため日本学校などに対外試合を申し込むも、なかなか受け入れてもらえない中で、2人は「このままだと子どもたちが経験を積めない。児童たちに試合をさせてあげるためにも、朝鮮学校同士で試合を組もう」と提案。賛同した中四国と九州の朝鮮学校が加わり、今日の姿まで発展した。2人の新任教師の思いから始まった大会は、現在、在日朝鮮学生のための数ある大会の中でも、歴史ある大会の一つとなった。
朴さんを含む実行委の主要メンバーたちは、当時、第1回大会開催の口火を切った2人に、発足当時の話を聞きに行ったという。2人の話を聞いた朴さんは、かれらの「子どもたちのために」という純粋な気持ちに感動したと語る。1日目の交流会で、嬉しそうに焼肉を頬張る児童たちを眺めながら、「子どもたちの笑顔を見たときが、一番やりがいを感じる」と話した朴さん。「次世代に繋いでいくための同胞たちの力は、今も昔も変わらず計り知れない。それが同胞社会の素晴らしさだと思う。子どもたちも今は分からなくても、大人になった時にそのことに気付いてくれたら」と語った。
朝銀が一翼を
大会には、中四国・九州地方を事業対象とする民族金融機関の朝銀西信用組合(以下、朝銀)がメインスポンサーとして付き、運営の全面的なバックアップを行っている。大会開催のための金銭的な援助から、会場設営や荷物運びなどの準備まで、大会運営における重要な役割を担っている。今年の大会は、大会名に「朝銀カップ」を冠して10回目の開催となった。
大会名に「朝銀カップ」の名が加わったのは、2012年に福岡県で行われた第39回中四国・九州大会から。当時、福岡初級アボジ会の会長を務めていた安成哲さん(朝銀広島支店常務理事・総務部長、50)は、大会に参加する朝鮮学校の所在地周辺に、朝銀の各店舗があることから、「同胞や子どもたちにとって、朝銀がより近しい存在になってくれたら」という思いもあり、大会メインスポンサーの話を持ちかけたという。安さんは、「負担はあっても、朝銀に対する子どもたちのイメージアップにつながると思った。朝銀の職員らが各地域の同胞と共に大会成功のために協力することで、交流を深められる貴重な場にもなった」と語る。「朝銀が同胞社会と一緒になって、学校や子どもたちを守る一翼を担えることは意義深い。12年間続けてきたように、朝銀ができることを継続してやっていきたい」。(安さん)
(朴忠信)